国土交通省が22日に公表した公示地価で、下落傾向が一層、顕著になった三浦市。都心へのアクセスでは劣勢に置かれ、人口減や高齢化に対する根本的な打開策を見いだせない現状を受けてか、下落率上位10地点のうち9地点を占めた。同市としては、地価公示が始まった1970年以来初めての事態という。地元からは、三浦半島全体を巻き込んだ連携のあり方や、地域の魅力の一層のPRを求める声が上がる。
「地価が上がることは考えられない。下落をどこで止められるか」。こう指摘するのは、三浦商工会議所の寺本紀久会頭だ。かつては遠洋漁業の町として活気に包まれたが、マグロ産業は衰退し、新たな経済開発の兆しは見えない。「もはや市単独ではなく、横須賀市や葉山町と連携した経済活性化を考えるべき」
不動産財産管理会社「オーシャンフロント」(同市三崎4丁目)の勝俣弘文専務は「実際の不動産取引は公示地価より低い。魅力やいいところを宣伝し、子育てしやすく居住価値のある街にしないと」と話す。
衝撃の第一波は、公示に先立つ16日に押し寄せた。三浦半島を事業展開の“地盤”と位置付ける京浜急行電鉄が、同市内の久里浜線延伸と大規模宅地開発事業の凍結を発表したのだ。
まちづくりの戦略が崩れ、今後さらなる下落も懸念される。浜銀総合研究所の新瀧健一主任研究員は「都市郊外では人口減少や少子高齢化に直面する地域社会の現実がある。企業が既存の計画の見直しを迫られる場面は今後も増えることが予想され、そうした動きを踏まえた地域のあり方の再考も問われている」と指摘する。
地元も、手をこまねいているわけではない。東京・新宿で21日に行われた県主催の移住フェアでは市職員が100人以上を前に移住を呼びかけた。京急沿線駅がある川崎市川崎区と比べて住宅地の平均地価が3分の1、東京都港区と比べて15分の1と示し、「意外と安く住める」と強調した。
市内への転居希望者に空き物件を紹介、試行的に短期間住んでもらう「トライアルステイ(お試し居住)」が昨秋から行われた。市と東洋大学、R不動産(東京都渋谷区)が連携した取り組み。フェアでは、お試し居住を経て海を望む週末暮らしを実現した20代男性が「品川から電車で一本、80分。おいしい野菜も魚も堪能できる」と呼びかけた。
大切なのは、地元らしさを守り、発信すること。三崎下町地区の50代商店主は提言する。「新鮮なマグロや野菜といった三崎の魅力が今ひとつ伝わっていないのでは。この地域を都会にする必要はない。発信力を高めれば、地価の下落に歯止めがかかるはず」