
新卒大学生の就職活動で企業が採用面接を始める時期が8月から6月に前倒しされた今シーズン。スケジュールの変更は紳士服業界の商品展開や売り上げに変化をもたらしている。各社は梅雨や湿気対策など、夏の本格活動を想定した機能性の高い商品を数々打ち出している。
「選考が前倒しになったので、少し急がないといけない」。会社説明会などの広報が解禁された3月1週目。青山商事(広島県)運営の「洋服の青山」横浜西口店で大学3年の男子学生が就活用スーツを探していた。選考解禁月が早まったことで、同社の1~2月の就活関連グッズの売り上げは前年比で2割アップし、昨年より動きが早いという。
選考開始が前倒ししたことで、青山商事は雨をはじく撥水(はっすい)機能商品の需要が高まると予想。スーツのほか、防水効果にも優れたレインフードコートや内部に水が浸入しない加工が施された靴、防水スプレーなど「梅雨対策商品」を充実させた。
AOKI(横浜市都筑区)も夏仕様の機能性スーツの需要増に期待する。学生たちが湿気や汗を気にすると予想し、自宅で気軽に洗濯機などで洗えるものやスーツ表面の温度上昇を抑える遮熱加工など、夏に最適な複数の機能を一着のスーツに集約。汗や連日の着用による傷み対策として、男性向けにスペアパンツ付きのスーツの商品量を前年から1・3倍に拡大して販売する。
コナカ(同市戸塚区)もしわに強くシャワーで簡単に汗や汚れを洗い流せるものやストレッチ機能が付いた快適性の高いスーツなどを取りそろえた。
就活スケジュールの変更は売り上げにも影響した。広報解禁が12月から3月に、選考開始時期が4月から8月に変更となった2014年度は「単価の高い冬物コートなどの売り上げが減少し、就活関連グッズが全体で前年比15%減だった」と青山商事。一方、15年の春夏スーツは6割増の売り上げで、ワイシャツやハンカチも伸びたという。
コナカも15年冬はコートの消費が鈍ったが、スペアパンツなどのボトムの複数購入やシャツやブラウス、アンダーウエアの購入点数が伸び、前年の就活並みの客単価を確保。AOKIも、コートに代わって「洗えるスーツ」を中心とした春夏に最適な機能性スーツがよく売れたという。
今シーズンについては、広報解禁月が昨シーズンと変わらず、シャツやブラウスなど買い足し需要は見込めるものの単価の高いスーツの需要はほぼ前年並みと予想される。各社は「例年並みに落ち着きそう」としている。