配合飼料大手のフィード・ワン(FO、横浜市神奈川区)は世界有数の養殖大国・インドで水産飼料を供給する新工場を今月から本格稼働させる。宗教的戒律に触れない動物性タンパク質として、東部で食される養殖コイ向けなどを生産。日本国内では人口減などで食料需要の縮小も見込まれるが、日系メーカーの拠点がないインドに機能的な配合飼料を売り込むことで現地業者の需要を先行して取り込み、活路を見いだす。
工場は3日から本格生産に着手した。現状は役員として同社員2人を含む20人だが、現地採用で100人体制にする。国際市況品として需要が高いバナメイエビ、ブラックタイガー向け配合飼料も供給する。
エビ類は主に日本や欧米への輸出用で、養殖コイ向けと合わせ、二つの柱で工場を軌道に乗せるという。生産規模などは非公開だが「将来的に売上高40億円の水準を目指す」と同社。
工場の建設は、2014年秋に同社に統合された旧・日本配合飼料が現地で合弁会社を設立し着手していた。FO社はこれを継承した。人口増で食料需要の拡大が見込まれる一方、宗教的戒律で牛や豚の摂取禁止があるインド。「動物性タンパク質の供給源として養殖魚生産を下支えすることに商機が見込める」と判断した。
継続的なマーケティング活動の結果、同国東部でカレー具材やフライ、蒸し魚などで多く食され“大衆魚”としてなじみ深い養殖コイに注目。現地での養殖では手法やえさに課題もあった。同社は自社製品の提案や品質管理の支援に勝算を見いだしたという。
同社は「コイ食は伸びており現地養殖業者の増産意欲も高い。効率よく体に吸収され、短期間で魚体を大きくするといった日本で設計された配合飼料を、現地価格を意識して再設計することで大きなニーズを取り込みたい」と語った。
日本国内の配合飼料メーカーは、水産物消費の減少を背景に養殖業者の後継者難や離農による市場縮小で、厳しい状況にある。日本の将来的な人口減少でさらに食糧需要が縮むことを見越す中、水産関連事業ではインドネシアの研究開発拠点に続く2拠点目となる海外進出は、新たな基盤固めを急ぐ意味も大きい。
同社幹部は「インド工場を海外事業の中長期的な大きな柱にしたい。インドをはじめアジア地域の食卓や食文化の一端を支え、そのリターン(の収益)を得ながら、自社の事業拡大に着実につなげていく」と説明した。