地域経済活性化で重要な役割を果たすのが地元密着の金融機関だ。全国地方銀行協会の会長も務める横浜銀行の寺澤辰麿頭取に、地域金融機関の現状や、4月に控えた東日本銀行との経営統合について聞いた。
-2015年の県内経済の総括、16年の展望は。
「15年は全体として景気回復の動きは極めて緩やかだった。春ごろまでは輸出も良く、生産も持ち直していたが、春先以降は中国をはじめ新興国の景気減速の影響が出て、回復の動きが少し緩やかになった」
「16年も基本的には原油安、資源安、金利安、円安がプラス要因として働き、拡大基調が続くのではないか。雇用情勢が改善し、所得環境も良く、個人消費も持ち直すだろう」
「新興国は中国を中心に景気が減速し、特に資源国は苦しむ可能性がある。(利上げした)米国にドルが還流する際、各国にもたらす影響がリスク要因だ。県内経済への影響としてまず考えられるのが輸出。米国向けは伸びるとみられるが、新興国向けがポイントになる」
-地域金融機関を取り巻く状況をどう見るか。
「金利が下がり、利ざやが低下するというマイナス要因は続くだろう。法人部門の貸し出しはメガバンクに比べると伸びているが、金利低下を補うほどのボリュームではない」
「預金として預かり、貸し出すことだけが金融サービスではでない。ビジネスマッチングやM&A(合併・買収)、事業承継、海外進出の支援などさまざまな機能をフルに使い、お客さまの事業をサポートすることも重要な役割だ」
-横浜銀行としての取り組みは。特に地域経済の活性化には中小企業の成長が欠かせない。
「地域の発展なくして、横浜銀行の発展はない。自治体の『地方版総合戦略』策定に参画し、地方創生に力を入れる。顧客企業の価値の向上が地域の発展につながる。目利き力を発揮し、各地域の中核的な企業を中心に価値向上を図る」
-デフレからインフレに変わる中、17年には消費税の再増税も控える。個人向けの取り組みは。
「低金利にあって貯金だけではお金の価値は下がる。金融機関としてお客さまの金融資産の購買力を守っていくことが必要だ。高齢化が進む社会構造の中、『貯蓄から投資へ』の流れを踏まえ、どういうポートフォリオ(資産構成)であれば将来に備えられるか、アドバイスが重要になる」
-4月に東日本銀行と経営統合する。
「昨年12月の臨時株主総会で承認され、器はできた。両行が心を合わせ、一体感を持ってスタートできるよう準備を進めている」
「コストを軽減し、(ITを活用した金融サービスの)フィンテックなど新たな分野にも経営資源を向けていく。成長マーケットである首都圏で統合のシナジー効果を発揮して経営基盤を固め、より質の高いサービスを提供することで神奈川に還元していく」
=おわり
てらざわ・たつまろ 1971年大蔵省(現財務省)入省。関税局長、理財局長、国税庁長官、コロンビア大使などを歴任し、2011年から現職。東大法卒。島根県出身。68歳。