2016年の訪日外国人客(インバウンド)の数は2400万人超に上り、前年比約2割増となった。世界的に旅行需要が拡大する中、ホテル業界の役割も増す。横浜を象徴するクラシックホテル、ホテルニューグランド(横浜市中区)の濱田賢治社長に、業界の現状やことしの見通しを聞いた。
-16年のホテル業界を振り返ると。
「15年は首都圏を中心に国内のホテル全体でインバウンドがプラスに働き、絶好調だった。一方、16年は稼働率、単価ともにやや低下傾向。横浜に関していうと、実はインバウンド自体の割合が東京の半分ほどしかなく、30%ぐらいあれば多いという状態。横浜はあくまで通過点と見る観光客が少なくない。そういう意味では、インバウンドの恩恵も15年と16年でそれほど大きな落差があったわけではない」
「現行のホテルはお客さまの多様な需要に応えきれていない現状にあると思う。一方、外資系を中心に新規ホテルがどんどん進出し、広がりを見せる民泊も新規顧客のニーズをしっかりとつかんでいる。既存のホテル業界は、拡大するマーケットの中で少し苦戦している印象だ」
-課題は。
「マスコミはよく20年を念頭にホテル不足を指摘するが、単に供給量を増やせばいいというものでもない。ターゲット別に需要と供給のバランスを考えることが大事。外資系ホテルの進出は海外富裕層のニーズに対応できるホテルが日本にはないことの表れ。その中で、日本のホテルが何をすべきか、対策を考えないといけない」
-ニューグランドの現状とことしの展望を。
「16年は耐震改修を無事完了した。その分10億円近い赤字となるが、開業90周年の17年は黒字転換していく。レストランや一般宴会は固定客に支えられており、宿泊も少なくとも20年まで旅行需要が減ることはないためいずれも堅調に推移するだろうと予想している」
「問題は競合が多い婚礼。当ホテルは親子3代へのサービスが特徴。両親や祖父母もニューグランドで挙式をしたという人が大勢いる。そうした家族との関係強化に努め、ニューグランドファンのネットワークを広げたい」
「当ホテルのインバウンドの比率は20%を切っており、当面それ以上取り込むつもりもない。お客さまの中では『外国人がいないホテル』との評判もあるが、それでも良いと思う。内外を問わずニューグランドの歴史と伝統を理解してくれる方に宿泊していただきたい。安売りせず、リピーターのお客さまを増やす施策が最も重要と考えている」
はまだ・けんじ JR東日本横浜支社長、横浜ステーシヨンビル社長などを経て、2013年2月から現職。15年には「横浜セントラルタウンフェスティバル Y156」実行委員長を務める。62歳。