
個人消費が盛り上がりに欠けた2016年の小売業。本格回復に至るか景気の先行きが注目される中、商店主らでつくる協同組合元町SS会(横浜市中区)の永井淳二理事長に商店街の現状や今後の事業戦略を聞いた。
-16年を総括すると。
「元町では6割がアパレル専門店だが、広い意味でのファッション業界は非常に苦戦をした1年間だった。地域経済においてはMM21(みなとみらい)地区などとのエリア間競争も激化している。これだけインターネットでモノを買う時代、商店街のリアル店舗で買い物をしてもらうのが非常に難しくなってきた」
-苦戦の主な要因は。
「所得のある層がシニア層に偏ってしまうところがあり、若い世代になればなるほど、消費をしなくなってきている。商店街の中でも、比較的シニア層がメインのテナントは盛業していると見受ける」
「16年は元町3丁目に高級時計の専門店がオープンした。個人消費の二極化の構造は否めない。安価でそこそこおしゃれに見えるカジュアル衣料で済ませる層と、出費をいとわない層の差が激しくなっている」
-株価や為替の影響は。
「株高の恩恵というのは高額なジュエリーや時計に集中する。昨年末になって株も為替も『トランプ効果』で変化しているところがあり、不透明だ。ただ、商店街は固定客のニーズに支えられる面もあり、百貨店のように株価や為替レートの影響が顕著に出ない」
-「アベノミクス」の評価は。
「政治にもの申す立場にはないが、ワークライフバランスや保育の問題に取り組んでいることには一定の評価をしたい。一方、やはり小売業や元町の加盟店を含めた中小企業に恩恵がなかなか回ってこない。本来であれば、経済政策の効果がとうに現れないといけない時期にきている。ただ、どんな時代も各商店の努力で克服しなければならず、決して政府頼みで解決するものでもない」
-今後の事業戦略は。
「元町は600メートルの長いショッピングストリートに200の店が連なっている。古くから営業する固有ブランドは30~40。新旧テナントがともにエキゾチックなムードを守ろうというのが元町の変わらぬテーマ。16年は新規店が10以上と順調にオープンしたが、今年もまちづくりと組み合わせたテナントの誘致活動をしていきたい」
「『3世代で楽しめるまち』を目指す。5年ほど前からベビーカーや子ども連れのお客さまも目立ってきた。元町には子ども服ゾーンが欠けていた。子ども関連のお店も今後増えるだろう」
ながい・じゅんじ 1975年、大学入学と同時にスター商会・スタージュエリー入社。97年、スター商会をスタージュエリーブティックスへ社名変更、同社とスタージュエリーの代表取締役社長に就任。2013年、元町SS会理事長。60歳。