構想から販売まで2年を要した最新のかしめ機。従来機に比べ作業効率をはるかに向上させた「次世代型」が評価された。「受賞によって多くの人に製品を知ってもらえる」と、代表取締役の盛満要一さん(52)は喜ぶ。
金属にプレス機械で穴を開け、その穴に「クリンチングファスナー」と呼ばれるねじやナットを圧入し、金属とファスナーがかっちりと接合する。二つの部品を一体化させるこの加工法を、かしめという。
パソコンやテレビなど、ありとあらゆる電気製品の中に組み込まれている細かい部品がかしめによって作られる。「地味だけど、製品を支える大事な作業」と専務取締役の尾坂明宏さん(51)は言う。
受賞したかしめ機は同社の3代目で、4年前に開発に乗り出した。「誰が作業しても高品質なかしめができる」をコンセプトに、これまでにはなかった7インチのタッチパネルを使用。ファスナーの種類によって適正な圧力は異なるといい、従来機では作業者が圧力計を見ながら勘を頼りに試し打ちを繰り返していた。
3代目は、タッチパネルに加工情報を選択すると、必要な圧力が自動的に呼び出される。設定値から外れていないか判断する合否判定機能も備え、万が一長さの違うねじが混入している場合などもエラー表示が出る。
製造業は品質管理が命。「客先に100個の製品を納品したとして、たった一つでもねじが外れる不良が発生すれば100個全てが返品される」と尾坂さん。小さなずれが大きな損失につながる。不良防止の徹底は、製品開発の際に最も重視していた。
簡単なタッチ操作で、かしめに不慣れなアルバイトなども安全に作業ができるようになった。後継者不足が課題の製造業の現場で、幅広い人材の雇用につながり得るのも利点だ。
「作業者を選ばず、不良を出さない高機能の機械は今後も求められるだろう」と盛満さん。受賞を機に、「自社製品をどんどん世に出していきたい」と思いを新たにしている。 (服部 エレン)
◆ファブエース 1988年6月設立。資本金9400万円。金属加工機械、工作機器、自動化機器などの開発・設計・製作・販売・保守。従業員数23人。横浜市都筑区荏田南4丁目。