慢性的な保育士不足をシニア世代の力で解決しようと、就労意欲のある高齢者らの育成に東京都内の人材紹介会社が乗り出した。定年後の生きがいを新たな仕事に求めるシニアと、仕事と育児を両立する保護者の双方を支援する狙い。今月下旬から横浜でも養成講座を実施する。
「グランドシッター養成講座」と銘打った民間資格養成事業を手掛けるのは、保育士のマッチングを手掛ける「BOA」(東京都千代田区、武市海里社長)。子どもの多い東京や神奈川で、豊富な人生経験を持つシニア世代の雇用創出などを目的に立ち上げた。
講座は2日間のプログラムで、元保育所長やカウンセラーといった専門家が基礎知識や簡単な工作、絵本の読み聞かせを指導する内容。日本ワークライフバランスサポート協会(同区)が資格認定。BOAは求人・求職状況に応じて有資格者の就労をサポートする。
ボランティア活動ではなく、仕事として保育の現場で活躍してもらうことを目指す。「基礎知識や実践力を備えた資格をよりどころに、自信を持って仕事に取り組んでもらえるはず。信頼を得ることで働きがいが増す」と武市社長は狙いを説明。こうした事業内容の将来性や実現性などが評価され、7月の「かわさき起業家オーディション」(川崎市産業振興財団主催)に入賞した。
6月に都内で初開催した講座には、定年前後の世代を中心に20人が参加。元の職種は校長や、看護師、システムエンジニア、自動車メーカーの営業など幅広い。会社役員クラスも3人いたという。
今年まで15年間キャリアカウンセラーとして勤めてきた都内の女性(66)は受講後間もなく、公立保育園の臨時職員として採用された。週5日、正規職員を補助する形で子どもたちを世話する。「70歳ぐらいまで続けられ、自分も周囲も幸せになる仕事として魅力を感じた。個々にきちんと向き合う点はカウンセリングと同じ」。人気保育士を目指そうと歌唱サークルにも参加する日々だ。
県が2013、14年度に実施した保育士実態調査では、同一施設での最長就業年数の最多が3年と短く、就労の継続性や潜在保育士の職場復帰が課題になっている。一方、早朝や夜間に働ける職員が思うように集まらず、難儀する保育所の声を耳にしていたという武市社長は、来年度にかけて150人を養成したいと意気込みをみせる。
横浜での養成講座は26、27日、横浜市中区のさくらWORKS〈関内〉で開催。12月にも市内で予定している。申し込みや受講料などの問い合わせは、BOA電話03(6272)5613。