
大成建設(東京都新宿区)は30日、技術センター(横浜市戸塚区)に建設した「ZEB(ゼブ)実証棟」を昨年6月から1年間運用した結果、年間のエネルギー収支ゼロを達成した、と発表した。同社は今後、開発した技術の高機能化やコスト削減などをさらに図り、2020年の市場投入を目指す。
ZEBは、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略。建物の消費エネルギーを極力減らすとともに、エネルギーをつくり出す設備も持つことで、年間の収支がゼロになる建築物を指す。
同社は年間のエネルギー消費量を一般のオフィスビルと比べて75%削減し、残りの25%を太陽光発電で創出。結果、年間のエネルギー消費量が1平方メートル当たり463メガジュールだったのに対し、つくり出したエネルギー量が493メガジュールだった。他の建物からエネルギー供給を受けるなどせずに、1棟のみで収支ゼロを達成したのは国内初という。
消費量削減に特に貢献したのは照明と空調だ。照明は、採光システムと超高効率発光ダイオード(LED)間接照明を併用して仕事場の明るさ感を確保するなどして約85%削減。空調は風や外気温、人の位置などの計測データから、どの窓を開閉すれば快適になるかを教えるシステムなどを導入し、約75%減らした。
同社は今後の目標として、20年にはZEBを市場投入し、30年までには普及拡大することを目標に掲げた。昨年4月に閣議決定したエネルギー基本計画で、国は20年までに新築公共建築物などで、30年までに新築建築物の平均でZEBを実現することを目指すとしており、国の動きに歩調を合わせた格好だ。
普及する上で課題に挙げられるのが建物の建築費だ。先進的なシステムを駆使しており、同社の実証棟で一般のオフィスビルに比べて「1・5倍から2倍」(同社)かかった。同社はこれを2割増し程度にまで抑えて市場に投入したい考えだ。会見した村田誉之社長は「今後も技術力を通して、低炭素でサスティナブルな社会の実現に積極的に貢献したい」と強調した。
◆普及拡大狙い県が補助へ
県は2015年度から、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」や、一般家庭の「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」の普及に向けた補助事業を始める。
県はこれまで、固定価格買取制度を念頭に太陽光発電の導入拡大を進めてきたが、今後は創エネの「自家消費」を目指すべき方向性と位置付け、太陽光発電のさらなる普及拡大につなげたい考えだ。
太陽光発電は、12年7月に始まった国の固定価格買取制度が普及の後押しとなっていた。しかし、昨年末の大手電力会社による再生可能エネルギー受け入れ中断問題への対応策として、政府が制度の抜本的見直しに着手。電力系統への接続制限や売電収入の確保など将来の見通しが厳しくなっている。
県は14年4月に策定したスマートエネルギー計画で、現在の集中型電源から、地域で自立的なエネルギーの需給調整を図る分散型電源への移行を提唱。エネルギー自立型の住宅やビルを実現するため、公募のモデル事業に経費の一部を補助する新事業を実施する予定で、開会中の県議会第2回定例会に7200万円の補正予算案を提出している。
ZEB導入補助は、国の補助メニューがない事業化の可能性調査(上限150万円)や建物の設計費(上限160万円)のほか、太陽光発電設備に上限290万円を補助する仕組み。
ZEHは、10戸以上を集中的に導入する事業が対象で、100戸分の補助を想定。国の補助金130万円に上乗せする形で、上限60万円を補助する。
県は「エネルギー自立型のビルや住宅の導入事例を知ってもらうことで、エネルギーの地産地消を推進していきたい」と話している。
