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GPSで営業効率化 顧客情報表示、スマホで閲覧 専門家「“監視”リスク対処を」

経済 | 神奈川新聞 | 2015年4月4日(土) 03:00

地図上に取引先や営業担当者の位置を表示する業務支援システム。スマートフォンやタブレット端末で出先からも操作できる=横浜市西区
地図上に取引先や営業担当者の位置を表示する業務支援システム。スマートフォンやタブレット端末で出先からも操作できる=横浜市西区

 営業効率化を支援する視点から、衛星利用測位システム(GPS)機能を活用し、社員の位置情報を把握するサービスの提供が広まっている。労使ともにメリットがある一方、慎重な運用が求められる側面もありそうだ。

 2013年からGPSを活用した営業支援システムを本格的に売り出し、大手を含め100社以上で導入実績があるオークニー(横浜市西区)。システム上の地図に営業先や顧客情報を表示し、スマートフォンなどで社外から閲覧できる。

 社員の位置情報を把握する利点を、森亮社長(52)は「営業先で成果が上がらず空振りした際も、次のチャンスを見つけやすい」と説明する。成果がないまま帰社すれば交通費や労働力が無駄になる。が、居場所が分かれば、地図表示された近隣の営業先を回るなど会社は新たな指示を出せる。

 保守点検の企業では、顧客からの急な呼び出しやクレームの場合も「現場近くにいる従業員を素早く見つけ、初動対応や追加の応援に対応できる」。さらに「この会社はもう一押し」「鍵となる担当者はこの人」といった情報を地図上に残し共有することで、「担当者が病気や転職でいなくなってもダメージを少なくできる」という。

 位置情報を会社に知られることに抵抗感がある人もいる。同社システムの場合、社員自らが居場所を申告するチェック・イン制をとるため、GPSは申告の操作をしなければ働かない。

 「ポケットベルや携帯電話が登場した当初も、プライバシーを侵すのではと危惧されたが、ビジネスの分野で当然のように普及した。GPSも、より生産性を高められるという前向きな理解が広がれば」と森社長。

 同様のシステムを提案しているレッドフォックス(東京都新宿区)は「働く人のワークライフバランスにも役立てられる」と説明する。端末上でタイムカードを切る出退勤管理の機能なども備え、「出社や帰社の必要がなく、業務時間が終われば直帰する働き方もできるようになる」と担当者。

 位置情報を正確につかめるGPSならではの機能として、営業時に携帯端末を持ち歩くだけで、移動ルートから電車交通費を自動計算する機能もあり、「交通費の申請作業で、営業に回せるはずの時間を削られずに済む」などと好評。会社側としても移動ルートが参照できるため、交通費の不正請求をなくせる利点がある。

 一方、運用面で「注意すべき点もある」と語るのは労使関係法制に詳しい成蹊大学法律学科の原昌登教授。GPSで社員の居場所を把握することは「ただちに法的問題は生じない」としつつも、「“監視”されるプレッシャーから法で定められた休憩時間を労働者が取りづらく感じたり、必要以上に急いで行動してミスや事故につながるリスクへの対処も重要」と警鐘を鳴らす。そのため、「会社は社員が安心して働けるための配慮として、目的を事前に丁寧に説明したり、必要な情報開示をしたりといった工夫が必要ではないか」としている。

 
 

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