おもてなしで満麺の笑みを 「ラー博」外国人客に売りこみ強化、円安やビザ緩和が背景
経済 | 神奈川新聞 | 2014年11月3日(月) 10:31

「新横浜ラーメン博物館」(横浜市港北区)が、訪日外国人への売り込みを強化している。円安に加えて東南アジアのビザが緩和されたこともあり、同館を訪れる外国人客が急増。宗教や思想を問わずに日本の食文化を楽しんでもらおうと、メニューの開発や環境整備を進めている。10年後をめどに欧州に進出することも決めており、ハード・ソフト両面で“おもてなし”を充実させ、海外に「日本のラーメン」をさらに浸透させたい考えだ。
見た目は、とんこつラーメン。だが肉類や魚類、アルコールは使用していない。同館がムスリム(イスラム教徒)やベジタリアン向けに開発した、豆乳ベースのラーメンだ。タマネギやキャベツといった野菜のだしなどに豆乳を加え、とんこつの味やコクを表現。チャーシューのように見えるのは大豆ミートを使用したものだ。「何も説明しなければ、とんこつラーメンと勘違いすると思う」。担当者は仕上がりに自信をのぞかせる。
同館は現在、肉類や魚類、アルコールを使用しないラーメンを、9店舗中6店舗で提供している。こうしたラーメンを本格的に開発し始めたのは昨年3月。欧州進出のための海外調査で、ベジタリアン向けのメニューを用意するのが当たり前という世界各国の飲食店の基準に触れたことがきっかけだった。
来館する外国人客が増加している現状も後押しした。2013年は計15万4692人。調査を開始した2000年以来、初めて15万人を突破した。「円安に加え、ビザ緩和が大きい」と同館。13年7月に東南アジアのビザが緩和され、来館する外国人も12年の1・7倍に伸びた。「宗教や思想を問わず、日本の食文化を楽しんでもらいたい」。豆乳ベースのラーメンは、ベジタリアンらにも満足してもらえるよう質を高めたメニューの一つだ。
10月29日には、世界のご当地ラーメンを提案する店舗を、来年5月までの期間限定でオープンさせた。フランスのブイヨンと日本の和だしを融合させたコンソメヌードルを、ラーメン店の創業者と協力して開発。なじみのある味の中に含まれたうま味を感じ、「和だし」の良さを実感してもらう狙いがある。
訪日外国人への売り込みは環境整備にも及ぶ。ムスリム向けに礼拝に利用できる個室を用意し、マットレスなども無料で貸与。日本語が苦手でもメニューを見れば注文できるよう、メニューを絵文字(アイコン)化し、無料WiFi(公衆無線LANサービス)も導入した。
20年には東京オリンピック開催を控える。同館は「外国人客がクレジットカードを利用できるATMを設置したり、多言語を話すことができる従業員を育成したりと、さらに対策を進めたい」と意気込む。
【神奈川新聞】
