
8月中旬の平日。横浜市中央卸売市場の野菜卸売業者「つま正」(横浜市神奈川区)の新社屋の前では、社員が“開店”の準備に追われていた。
この日は週3回の「ドライブスルー八百屋」の開店日。午前10時過ぎ、来店客の車が停車すると社員は野菜を詰め込んだ段ボール箱をトランクに搬入。プレゼントのバナナを受け取った女性は窓越しに支払いを済ませ、一度も車から降りることもなく帰って行った。
この間、1~2分。同社取締役統括部長の小山正和さんは「おなじみの光景になりつつある」とほほ笑んだ。
業務用青果卸売業者のつま正はホテルや結婚式場、外食チェーンなど約千の顧客を持つ。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大でホテルや飲食店は休業や時短営業に追い込まれ、同社の4月の売上高は前年同期比8割減にまで落ち込んだ。窮地を脱しようと5月上旬にいち早く開始したのが、ドライブスルー方式での野菜販売だった。
新しい試みは大きな反響を呼んだ。野菜18種類と卵のセット(3500円)とこれに米を加えたセット(5千円)の2種類を販売したところ、1カ月間で3千セット近くを売り上げた。
なぜ人気を集めたのか。小山さんは言う。