百貨店とアパレルの衰退を象徴するような出来事だった。

5月8日、中堅百貨店のさいか屋(川崎市川崎区)が、横須賀店(横須賀市)を2021年2月に閉店すると発表した。
その1週間後の5月15日、さいか屋の取引先の一つでもあるアパレル大手のレナウン(東京都)が自力での経営再建を断念し、民事再生手続きを開始したと公表した。
レナウンは紳士服の「ダーバン」や英国発祥の高級ブランド「アクアスキュータム」など百貨店向けのブランドが主力。昨年12月期決算では売り上げ構成比における百貨店の割合は55%と過半を超えていた。
百貨店を主戦場とするアパレルはレナウンに限った話ではない。三陽商会(同)もオンワードホールディングス(同)も、売り上げの約6割を百貨店が占める。
一方、百貨店にとっても屋台骨は衣料品だった。日本百貨店協会によると、20年前の1999年、全国の百貨店における衣料品売上高は3兆6590億円に上り、百貨店総売り上げの4割を超えていた。だが、2019年、衣料品売上高は約1兆6830億円にまで落ち込み、全体の3割にも満たなかった。
百貨店業界に詳しい流通経済研究所の加藤弘之主任研究員は「レナウンの破綻は、百貨店に大きく依存しているアパレルが苦境に立っていることを示している。百貨店が衰退すれば、アパレルはさらに苦しくなる」と指摘する。
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アパレルと共に歩んできた百貨店の衰退はいつ、どのようにして始まったのか。さいか屋の岡本洋三社長(57)は「10年、20年の期間ではない。おそらく30年前から始まっていた。衣料品の仕入れ方式を変えたことが大きな転換点だった」と振り返る。