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【カリスマ失墜】(下)統治の陥穽 歪な権力構造の破綻

経済 | 神奈川新聞 | 2018年11月23日(金) 02:00

(上から)記者会見でカルロス・ゴーン容疑者を「到底容認できない」と糾弾した西川広人社長=19日午後10半ごろ。インタビューに答えるゴーン容疑者=2015年5月
(上から)記者会見でカルロス・ゴーン容疑者を「到底容認できない」と糾弾した西川広人社長=19日午後10半ごろ。インタビューに答えるゴーン容疑者=2015年5月

 売上高約12兆円の日産自動車(横浜市西区)、その役員60余人の中で代表権を有するのは3人。そのうちの2人を、もう1人が「首謀者」と断じ、「弊害」「負の遺産」とまで指弾し事実上、検察へ告発した。

 「取締役の解任に当然値する重大な不正を働いた」「長年、実力者として君臨してきたことによる弊害は大きい」

 3人のうち唯一日本人で代表権を有していた西川(さいかわ)広人(ひろと)社長(65)は19日夜の記者会見で、代表取締役会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反容疑で逮捕=と、代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者(62)=同=の2人を明確に断罪した。

 「断じて容認できる内容ではないと確認できている」。22日、西川社長自らが取締役会を招集し、代表権を奪う決定をした。

妄 信 


 繰り返しなされた報道陣からの「なぜ食い止められなかったのか」という問い。

 西川社長は「徐々にそうした体制になっていった」と弁解し、こう語った。

 振り返ったのは2005年のことだった。ゴーン容疑者が、ルノーと日産の最高経営責任者(CEO)を兼務することとなった時だ。

 「あのときわれわれは、ごく当たり前に『いままで日産を率いてくれたゴーンさんがルノーの責任者にもなるのだから、日産にとってもいいことなのではないか』と考えた。それ以上、将来それがどうなるのか、あまり議論することがなかった」

 ガバナンス(企業統治)の重要性を国内企業の中でも最先端で説き、経営の責任や、必達目標を掲げ、それに応じた報酬や昇進といった経営手法を率先して輸入した日産だった。

 しかし同時に歪(いびつ)な構造が着実に構築されていった。

 日産の株式の43%を保有するルノー、その代表者が執行権を有し、同時に日産の取締役会の議長でもあった。

 「本来あるべきオープンなガバナンスという側面からすると、非常に注意しなければならない権力構造だった」

 05年から副社長を務め、その歪な権力構造の一端を担ってきたが故に西川社長は吐露するように言った。

 「何かが起きたときに把握できるような歯止めが弱かった」

 不正を「長きにわたっていた」とし、表面化させることができなかった理由についてこう言い置いた。

 「会社の中の仕組みが非常に形骸化していた。透明性が低いガバナンスの問題が大きかった」

 有価証券報告書への記載が実際の報酬額より少なかったことや、会社の投資資金を目的を偽って支出していたこと、会社の経費を私的な目的で不正使用していたという三つの不正を日産側は指摘している。

 多くの社員や役員が気付きながらも妄信し目を逸(そ)らしていたのではないか。そうした指摘に西川社長は「それぞれの仕事をぶつ切りで指示すれば全体は見えない」と答えるしかなかった。

 追求した企業統治だったが、追い求めたそれ自体に陥穽(かんせい)があり、だから立ち止まることはできなかった。

実 践 


 権力集中の構図について問われた西川社長は繰り返し、「集中したからといって必ず不正が起きるわけではない」と付言し続けた。

 そうした自覚があればなおさら首謀者を止められなかった責は重たい。ゴーン容疑者が日産のCEOに就いたのとほぼ同時期に、西川社長は自動車部品の調達を手がける購買部門のゼネラル・マネジャーに就任し、「あのとき」と振り返った「05年」に、副社長へと昇進している。

 不健全な企業統治のありようを西川社長自身が、その身をもって最もよく知る立場だったともいえる。

 司法取引制度によって一部の役員は刑事責任が減免されることになりそうだ。しかし、企業や経営陣が負うべき責任は刑事責任にとどまらない。「猛省しなければいけない」と口にしたが、猛省で足るか。

 大きな岐路に立つ世界的自動車メーカーだからこそ、捜査によって全容が解明され事態が落ち着いたとき、「ガバナンス」の本当の実践が試される。

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