挑む中小企業
神奈川工業技術開発大賞(1)自動運転の影響計測
経済 | 神奈川新聞 | 2018年11月2日(金) 15:54
実用化に向け、国を挙げて開発が進められている自動車の自動運転。研究を進める上で必要な、ハンドルやアクセル、ブレーキなど運転の自動化がドライバーに及ぼす影響について計測するための実験車の開発を、これまでになかったソフトウエア的な対応で実現させた。
従来、実験車を製作するには個々の実験車に合わせハンドルやアクセルなどに取り付ける専用のセンサーをオーダーメードで試作し、車両を改造して装着する必要があった。このため実験車は“改造車”となってしまい、一般公道での実験走行が難しく、製作期間とコストが増大する課題もあった。
ドライブレコーダーや電波計測車の製作などを得意とするアイティエス21企画は、従来とはまったく違うアプローチで実験車の開発を進め、これらの課題を解決した。
車内に設置されている車内通信(CAN)を解析し、ハンドルやアクセルの操作量などの運転データを計測する実験車を開発した。CANは不正に侵入されないよう暗号化されているが、各自動車メーカーとの信頼関係の下、これまでの経験やノウハウ、人工知能(AI)を駆使して解析を行い、運転データを収集している。
車を改造することなく市販車の状態を保ったまま実験を行うことができるため、公道での走行や被験者の走行実験が問題なく行える。車体に改造を一切加えないため、高級車を使ったレンタカーでの実験も可能となり、コスト効果が高くなる。
製作期間も従来の6カ月から1カ月ほどに大幅に短縮。従来の実験車では製作に時間がかかるため年1回程度の走行実験しかできなかったが、年間5回の実験が可能となり、研究開発の加速化につながっているという。
代表取締役の本多直記さん(59)は、元々は日産自動車でカーナビゲーションや携帯電話の開発を担当。その後独立して携帯電話の電波を測定する電波測定車や、ドライブレコーダーの開発に取り組んできた。
3年前、国の自動運転プロジェクトの実験車製作を落札し、これまで培った技術や経験をフル活用して1年かけて新たな手法で実験車を開発。現在は実績を評価され、自動運転を評価する実験車両の随意契約企業として直接受注している。
本多さんは「次のチャレンジとして、これから研究開発が始まる新しい国の研究開発プロジェクトの『自動飛行機』に関わりたい。そしてまた、5年後の神奈川工業技術開発大賞を獲得したい」と語った。
◇
「神奈川工業技術開発大賞」の表彰式が12日、行われる。表彰されるのは、県内の中堅・中小企業が開発した多様なジャンルの工業技術・製品計7件。受賞した技術・製品を紹介する。
◆アイティエス21企画 2001年設立。資本金1千万円。ナビゲーションなど自動車のIT開発。従業員5人。横須賀市金谷。