少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や、育児、介護との両立など労働者のニーズの多様化を背景に、国会で働き方改革関連法が成立して1カ月が経過した。県内企業では、法整備を先取りしてさまざまな施策が打ち出されている。人手不足が大きな課題となる中、人材確保をテーマに労働環境整備を進める動きが目立ち始めている。県内の動きをまとめた。
採用競争力を高めるため契約社員を正社員に転換する動きが広がる化粧品業界。ファンケル(横浜市中区)は4月から、店舗の契約社員を廃止し、原則、転居を伴う異動がない「地域限定正社員」を新設した。正社員とすることで現場の意識も高まり、「長く安心して働ける」と好評だ。グループ本社と工場両部門の契約・パート社員や直営店舗のパート社員についても、契約期間のない「無期労働契約」に切り替えた。
運輸・物流業界も人手不足は深刻。物流量の増加やトラックドライバー不足に備え、昨年から第二新卒の採用の開始など、採用方法の多角化を進める総合物流の丸全昭和運輸(同区)は、労働環境の向上に向け残業時間の抑制にも乗り出す。本社ビル内では終業時間に帰宅を促すアナウンスを実施。また、特に海外物流部門では、時差の関係で深夜まで残業する例も多かったため、午後10時以降の残業を明確に禁止した。担当者は「終業後の時間はリフレッシュに使ってほしい」と話す。
オフィスにいなければならない、という常識も変わりつつある。オフィス家具メーカー、オカムラ(同市西区)は、1997年からテレワークを導入。フレックスタイムなども進めてきた。昨年から、さらに柔軟な働き方を実現するため原則月4回、在宅勤務を導入し、自宅のほか介護先での勤務や、在宅勤務中の中抜けも認めている。ケースワーカーとの打ち合わせや学校行事への参加などが、半休や休みを取らなくても可能になった。
また、長時間労働削減の観点から、自宅近くや出張先で仕事ができるよう、東京23区内や東京近郊のオフィス、拠点など22カ所を中心に「サテライトオフィス」を整備。デスクを用意し、社内ネットワークも使用できる環境を整えた。
拘束時間が長いイメージがある金融機関でも、柔軟な働き方への対応は着々と進む。
コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)と傘下の横浜銀行(同区)などは4月から、コアタイム(午前11時~午後2時)を除いて始業、就業時間を柔軟にするフレックスタイム制や、次の始業時間までに11時間の休息時間を設定する勤務間インターバル制度などを導入。
また、年5日間を限度に、1時間単位で休暇を取得できる時間単位年休も導入するなど施策を開始し、今後はテレワークについても対象者を広げる予定だ。担当者は「従業員が自己啓発やリフレッシュに充てられる時間を増やし、銀行員としての幅が広がるとよい」と効果に期待する。
日曜日や祝日にも出勤する百貨店でも、安心して働ける環境づくりが進む。横浜高島屋(同区)では4月から、年末年始やゴールデンウイークなどの繁忙期に、日曜日と祝日限定で、従業員や販売スタッフを対象にした子どもの保育を本格的に始めた。子どもの預け先を確保できず、休まざるを得ない問題を解消する目的だ。
7月末までに10回実施。これまでに0~7歳の子ども延べ80人が利用した。保育事業者に委託し、本館から徒歩圏内にある建物の一室を使用。日曜日や祝日には使わない会議室を有効活用している。「職場と保育場所が近いため、すぐに駆け付けられる安心感があった」「職場を見せることができ、子どもが喜んでいた」などの声も寄せられているという。