収束後使える食事券も
新型コロナウイルスの感染拡大による自粛ムードを受けて、個人経営の飲食店では事業継続に不安を抱える日々が続く。苦境にある飲食店を支援したい顧客の思いと困難に立ち向かう飲食店をつなごうと、横浜市港北区のグルメバーガー専門店「MADE IN HANDS」経営の阿部和彦さん(34)が、飲食店救済プロジェクトを始めた。クラウドファンディングで支援を募り、支援者には事態収束後に加盟店で利用できる食事チケットを配布する。阿部さんは「日本全国を巻き込み支援の輪を広げたい」と話している。
「店閉めるかも」「自粛なら補助金を」 〝夜の街〟に悲鳴
「おいしい、はコロナに負けない。」と銘打ったプロジェクトは、4月末までの予定で、インターネットで支援を募っている。
仕組みはこうだ。全国の困っている店を加盟店として募り、写真共有アプリ「インスタグラム」に「#yummybeatscorona」と付けた上で料理の写真を投稿してもらう。それを見て共感した人に支援を募り、食事チケットを配布。チケットの利用分を各加盟店に振り込む。
たとえば4千円の支援に対しては、3千円分のチケットを送る。残った千円からクラウドファンディングの手数料やチケット印刷代などの経費を差し引き、合計額を分配金として加盟店に平等に届ける。店の負担はない。
「分配金で劇的に経営は改善しないだろうが、支援の気持ちが精神的な支えになる」と阿部さん。事務作業は、阿部さんの前職であるITコンサルティング企業の先輩5人も加え、ボランティアで担う。
感染症の話題が出始めた2月中旬以降、同店でも事態は深刻だった。「個人飲食店だと売り上げが1割減ると事業継続に不安を感じるが、今回はおよそ半減してしまった」。人の往来は減り、来客も少ない。近辺では、自粛ムードで夜の会合のキャンセルが千人に上った店もあったという。
危機感を感じた阿部さんは同月27日、会員制交流サイト(SNS)で苦境を記した上で「新型コロナ予防はしっかりと意識した上で、過剰とも思える飲食店回避の流れについて一考していただければ」と訴える。この投稿は大きな反響を呼び、約4千件の「いいね」がついた。多くのコメントも寄せられたという。
「リーマン・ショックや東日本大震災の際より厳しい」「来店を呼び掛けたいが、積極的に誘えない」という飲食店からの声。さらに、「大変そうだから店に行きたい」「行きたいが怖いので自粛したい」という客側の思いもあった。
「一方は助けてほしいが積極的に訴えられない、もう一方は助けたいが行けない。要は新型コロナのせいでこうした思いがうまくつながらない。何とかならないかと考え、クラウドファンディングを思い付いた」と阿部さんは振り返る。
現在、参加店舗は岩手県から沖縄県までの20店舗。3月27日現在で約50万円の支援が寄せられたが、目標の500万円に向けては道半ばだ。阿部さんは「全国から加盟店が集まって広がれば。個人事業主に対しては、この事態はそう簡単に収まらないので、お互いできることはやって乗り切ろうと呼び掛けたい」と話している。
クラウドファンディングは専用サイト「MOTION GALLERY」で実施。