日本では世界各国に比べ起業率が低いと指摘されて久しい。経済の低迷で就労の安定志向も根強いとされる。言葉も知らないままに来日し、異郷の横浜で起業して40年近いインド人ビジネスマンは、日本の若者の起業家精神をどう見つめているのか。初の著作「日本で成功する秘密~ゼロから成功したインド人」(青山ライフ出版)に込めた思いを聞いた。

インドと横浜の縁は深い。開港期から絹製品を扱うインド商人が集住し、今の山下公園(横浜市中区)が広がる地区に商館が軒を連ねていた歴史がある。公園の一角には、関東大震災で被災したインド人住民への支援に感謝を込めた「インド水塔」が、今も立つ。
その公園に程近いビルに構える貿易会社「GMCジャパン」のオフィスで、I・M・チュガーニさん(68)は「各国に比べても日本にはチャンスはたくさん残されている」と断言した。
「日本は製造業だけではない。ファッションやアニメなど、さまざまなものが生まれてくる国。サービスの需要を探せば、日本で起業することは難しくない」
■ひとまず3年
チュガーニさんはインド南部の中心都市、チェンナイ(旧マドラス)に生まれた。地元の大学で経理を学び、貿易会社に入った。
強い関心を日本に抱いていたわけでもない。1970年開催の大阪万博のニュースを時折、新聞で目にする程度だった。