木造による中高層建築がじわり見直されつつある。昨年5月には横浜市で初となる大規模耐火木造建築の4階建て高齢者施設が完成したほか、同市中区では今年3月にも11階建ての木造ビルが着工する。見直される「木」のぬくもりをいかにして中高層建築に使っていくか─。技術の挑戦が続いている。

「利用者のことを一番に考え、転倒の際の安全と木の温かみを感じてもらうために『木造』を選びました」
こう話すのは、横浜市港南区に完成したばかりの特別養護老人ホーム「ひまわり港南台」の担当者。建築計画を練る際に多様な工法、素材の中から「木」を選んだ。地下1階地上4階建て(延べ床面積約8394平方メートル)のうち、2~4階を木造にした。180人の定員で、耐震等級2(建築基準法の1・25倍の耐震性)と同等の安全性能を確保したという。
木造にしたのはコスト面でもメリットがあったからだという。鉄筋コンクリート造より建築費が若干割安にできるという。「そうしたコスト低減によって利用料金を引き下げることにつなげることができた」(担当者)と明かす。
さらに中長期的な将来にもメリットがあるという。この高齢者施設の土地は50年間の定期借地契約で国から借りている。50年後には更地にして返還する計画で、その際の解体する費用も、木造の方が割安で済む見通しだ。