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「食」の現場 経済記者が行く
変わる横浜中央市場(上) 取扱高減少に危機感

経済 | 神奈川新聞 | 2020年2月20日(木) 18:00

おさかなマイスターでもある村松社長が開く「おさかなマイスター教室」は市場開放の人気イベント=横浜市神奈川区の横浜市中央卸売市場
おさかなマイスターでもある村松社長が開く「おさかなマイスター教室」は市場開放の人気イベント=横浜市神奈川区の横浜市中央卸売市場

 卸売市場法が18年6月に改正され、今年6月から施行される。県内最大規模の横浜市中央卸売市場はどのように変わるのか。

 2月1日、土曜日。一般開放された横浜市中央卸売市場本場(同市神奈川区)の水産物部卸売場に、親子連れなど約50人が集まっていた。お目当ては、新鮮な魚の見分け方や調理、保存法を伝授する「おさかなマイスター教室」だ。

 「アジだけでも約20種類はある。しらすばかり食べているアジは、水分が多いのでフライにするとふかふかに仕上がる。一方、エビばかり食べるアジは水分が少なくて堅いので、刺し身にするとうまい」

 仲卸会社「ムラマツ」の村松享社長(61)がそう紹介すると、参加者は一様に驚いた表情を浮かべた。

 同市場の一般開放は2008年に地域交流事業としてスタート。同市場の水産物部が主体となり、現在は月2回、マグロ解体ショーや魚のさばき方教室などを行い、魚食普及や地産地消を広くアピールしている。

 魚の魅力を伝える「おさかなマイスター」として活動に携わる村松社長は「中央卸売市場が身近な存在として認知されるようになった」と笑みを浮かべる一方、「市場を取り巻く環境は厳しい。部全体で盛り上げていかないと活性化できない」と危機感を口にした。

厳しさ増す市場環境

 村松社長の仲卸業者としての歩みは半世紀に及ぶ。小学5年生の時から父が勤める仲卸店を手伝い、中学、高校時代は朝4時からウナギをさばいた。19歳で、もう一つの横浜市中央卸売市場である南部市場(同市金沢区)の仲卸会社で社員として働き始め、30歳で開業した。

 仲卸業者は、卸売業者から仕入れた魚介類を市場内の店で小分けして鮮魚店や飲食店に販売する。品質を見極める自らの「目利き」で購入、販売した生鮮品が市内の店舗、さらには家庭の食卓に並ぶ。

 だが、この20~30年ほどで足元の市場の状況は大きく様変わりした。量販店や飲食チェーンの台頭により、市場に頼らず、産地や水産会社と直接取引する市場外流通が増加。加工品など市場を経由することが少ない物品の流通割合も増え、さらには魚食離れ、漁獲量の減少も拍車を掛けた。

 農林水産省によると、全国の卸売市場における水産物全体の市場経由率は1980年度は86%あったが、2016年度は52%にまで落ちた。

 水産物で全国6位の取扱高を誇る横浜市中央卸売市場でも同様の傾向だ。取扱数量は1982年の27万トンを境に減少に転じ、2010年には10万トンを切った。15年3月、市はついに中央卸売市場としての南部市場を閉め、本場市場と統合させた。南部市場を足場にしていた村松社長も本場へ移転した。

 南部市場と本場の統合は、本場の水産関係者にとっても大きな衝撃だった。仲卸業者でつくる横浜魚市場卸協同組合の布施是清理事長(64)は「中央市場としての機能を高めていかなければ、いずれ南部と同じ道をたどる」と危機感を抱く。

 統合から2カ月後の15年5月、横浜市中央卸売市場水産物部は卸売業者、仲卸業者で初めて共同策定した経営ビジョン「横浜食文化の一丁目一番地へ」を発表。卸・仲卸が協同して地場魚集荷や鮮魚加工を強化し、地産地消を進めていく考えを示した。

 市場開放もその活動の一環。布施理事長はこの5年間の活動を振り返り、「市場の認知度やブランド力は多少上がったと感じている」と話す。手応えを口にする市場関係者は少なくなかった。

 
 

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