
白い手玉が勢いよくはじき出され、乾いた音が鳴り渡った。ビリヤードのキューに慣れた手つきで滑り止めを塗ると、ベンチャー企業勤務の阿南安紀さん(28)はバーカウンターに移り、グラスをゆっくりと傾けた。
グローバルエージェンツ(東京都)が昨年9月に川崎市中原区で開業した「ネイバーズ武蔵中原」。5階建て144室の賃貸マンションはソーシャルアパートメントとも呼ばれ、一室の面積は20平方メートル以下、水回りは共有する。
その分、住人の誰もが使える機能にこだわった。極め付きはミニシアターだ。実際の映画館と同じシートが12席あり、150インチの大画面が広がる。200平方メートルを超えるラウンジには高価な調理器具や最新のゲーム機器をそろえ、楽器演奏が可能な防音室も備えた。
阿南さんは「大勢が集まるので連日パーティーのよう」と満足そうだ。
共用部の充実は賃貸マンションでも欠かせない要素だ。デベロッパーも強化に動く。
東京建物(東京都)が昨年都内で開業した「ブリリアイスト千駄ケ谷」(149戸)。共用施設のジムには伊メーカー製のトレーニング機器を完備し、大型用品がしまえるトランクルームや宅配ロッカーも用意した。