
株価が高水準で推移、為替相場も安定し、大手製造業を中心に企業業績が上向き始めている。一方で、中小企業にとっては景気回復の実感が伴わないとの声も根強い。今年の横浜経済の見通し、課題について、横浜商工会議所の上野孝会頭に聞いた。
-景気回復の裾野は広がりつつあるのか。
「商工会議所が関わる中小企業には、実感が伴わないと言われている。しかし、横浜市と共同で昨年12月に発表した景況動向調査では、回復基調が鮮明になることが見込まれた。ただ、会員企業では一般消費者向け小売・サービス業は厳しく、景気回復の恩恵は広がっていないだろう」
「『いざなぎ景気を超えた』という好景気だが、過去の例ではそろそろ頂点を迎えるのではないか。ただ、横浜では2019年のラグビーワールドカップ(W杯)、20年の東京五輪・パラリンピックがある。波及効果で景気が簡単には落ち込まない、というのが大方の見方だろう」
-景気回復が進む中、特に中小にとって人手不足が深刻になりつつある。
「人手不足で景気にブレーキがかかることが心配だ。行政に対しては、人材確保、育成の施策を優先して展開してほしいとの声が圧倒的に多い。われわれも例えば市内大学と連携し合同会社説明会などを行っているが、それだけではどうにもならない状態で、行政に政策展開を求めたい」
「現在の外国人材の受け入れルールが決められたのは、人手が余っていた時期。人手不足が深刻な現状では、いかに外国人材を受け入れたらいいか考えるべきだ。日本商工会議所も研究会を立ち上げ政府への進言を考えているが、横浜商議所も、本当に困っている分野に外国人材を受け入れることなどを考えたい」
-事業承継が課題だ。
「われわれ中小企業にとって一番の問題の一つ。間もなく団塊世代の経営者が引退するが、欧米と比べて開業率は非常に低い。中小が減少すると地域経済の衰退、日本の国力衰退を招く。何とかせねばならない」
「非常に使い勝手が悪い事業承継税制は、18年度の与党税制改正大綱でようやく抜本拡充が盛り込まれ、大きな力になると思う。人手不足と事業承継の問題、外国人労働力の導入や、女性の活用、リカレント教育(生涯教育)と、一つずつ積み上げる以外に景気拡大は難しいだろう。足かせを一緒に取り除く努力をしたい」
-カジノを含む統合型リゾート施設(IR)への対応は。
「19年から横浜市の人口が減少する。観光、MICE(国際会議などの総称)が経済発展の大きな力になるが、その延長上にIRがあってしかるべきだ。まずはギャンブル依存症対策基本法がきちんとした法律としてできるよう見守り、できることは協力したい。法律ができるタイミングと合わせて推進協議会を結成することになると思う。当初の想定より時間的に後ろにずれ込んだが、焦ることなく着実に足元を固めたい」