トラック用フレームやアクスル(車軸)で国内シェアトップを誇り、建設機械用キャビン(運転室)にも強みを持つプレス工業(川崎市川崎区)。国内外とも事業環境が堅調に推移する中、角堂博茂社長は電動化をはじめ、自動車業界で進む変化に機敏に対応する必要性を説く。
-2017年度上期は増収増益だった。
「主力のトラック部品は、国内生産が排ガス規制前の駆け込み需要で伸び、タイも新モデルに対応した新規受注で拡販した。昨年まで停滞気味だったインドネシアも底打ちした感がある。建機関連は特に中国で、政府主導のインフラ整備が旺盛で好調だ。先日も建機キャビンを製造する蘇州の拠点に行ったが、移動の道すがらマンション建設や道路整備などが盛んに行われていた。建機需要は下期もいい状況が続くとみている」
-今後の見通しは。
「国内のトラック関連は需要を先取りした反動が出てくるのではないか。人口減や高齢化の構造要因も懸念材料。それでも、トラック、建機とも東京五輪に向けた公共投資は底堅く、20年ごろまでは堅調な推移が見込まれる。海外ではトラックはインドネシア、建機は中国が鍵。国王の死去による服喪期間が明けたタイの消費も、徐々に良くなるのではないか」
-注目する新興市場は。
「まずインド。インフラ整備の必要性に加え、人口規模からみたマーケットの大きさは魅力だ。現状はフレームもアクスルも強度が低く、廉価なトラックが主流だが、生活水準の向上で生鮮品配送など、物流ニーズの増大による高機能トラックの生産増という変わり目がやがて来る。すぐに投資できる環境にはないが、注視が必要。完成車メーカーがこぞって重視する南アフリカも焦点だ」
-クルマの電動化の潮流をどう見るか。
「EV(電気自動車)がクローズアップされた今年を一字で表すなら『変』。世界の排ガス規制の流れをみれば、電動化は加速していくだろう。動力源が内燃機関から電池に取って代われば、部品メーカーへの影響は大きい」
「電動化でもフレームの役割は不変だが、車載電池が重い分、軽量化の要請が強まる。(薄くても強度がある)高張力鋼板や新素材で活路を開く必要がある。ディファレンシャルギアを組み込むアクスルケースの機能変化も想定される。EV化で取り扱い部品がどう変化するかは、完成車メーカーと協力してさまざまな研究を進めている」
-無資格検査問題の影響は。
「日産自動車向けのラインが約3週間止まった。私たちも尾道工場(広島県)でトラックの組み立てをしているが、ルールにのっとった完成検査の実施を確認している」
-元日のニューイヤー駅伝に、陸上競技部が9年連続で出場を決めた。
「従業員のモチベーション向上はもとより、会社の知名度アップで採用活動にも好影響を与えている。強豪ぞろいで厳しいが、正々堂々、攻めの姿勢で頑張ってほしい。それは18年にプレス工業が目指す姿にも通じる」