「MaaS(マース)」という単語が注目を集めている。自家用車を除く複数の交通手段について、経路検索から予約、運賃の決済までを「一つのサービス」として利用者に提供し、移動をより快適にする試みを指す。本格実施への動きが加速する中、東急(東京都)などが静岡県の伊豆半島で展開している実証実験に参加し、その可能性と課題を探った。
今月上旬、観光客でにぎわうJR熱海駅の改札口。駅員にスマートフォンの画面を見せただけで、記者は駅構内へと進むことができた。
利用したのはウェブサービスの「Izuko(イズコ)」。購入したデジタルチケットの画面を提示すると、当日に限り区間内の電車やバスが乗り放題になる仕組みだ。
イズコは水族館や植物園といった観光スポットとも提携し、入場や飲食に使えるチケットを発行している。電車などと同様にスマートフォンの画面を見せるだけの手軽さが、外国人観光客からも好評という。
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イズコのチケットでJR伊東線と伊豆急行線を乗り継ぎ、伊豆急下田駅に着いた記者は、ある民家を訪ねた。家人の坂部鉄雄さん(68)が実証実験の目玉の一つ、「乗り合いバス」を自宅近くに呼び出して目的地に向かうという。