横浜・関内地区周辺に残る戦後建築遺産「防火帯建築」を活用し、アーティスト・クリエーターの活動拠点の集積を図ろうと、横浜市が10日夕、「芸術不動産セミナー」を同市中区のKGU関内メディアセンターで開いた。ビルのオーナーや街づくりの専門家らが取り組み事例などを報告した。
同地区の空き物件を活用する芸術不動産は同市文化観光局が2005年度から着手。これまでに約130件の助成を行うなど実績を上げている。16年度からは、戦後復興期に建築され、関内地区の街並みを特徴付けている防火帯建築を活用するモデル事業がスタート。弁三ビル(1954年完成)と住吉町新井ビル(61年完成)が、民間主導の活用モデルとなっている。
両ビルとも1、2階のテナント部分は飲食店などが入居しているが、3、4階の居住スペースは設備の老朽化などの影響もあり、空室状態だったという。
弁三ビルは、空き家再生を手掛ける企業とも組み、リノベーション(大規模な建物の改修)を行い、現在はほぼ入居している状況だという。弁三ビルを所有する原地所の原信造さんは「古いビルをそのままにしておくと劣化するだけ。少しずつ手をかけて維持する。不動産のさまざまな活用を考えていく」と話した。
住吉町新井ビルは、原状回復なしの条件で、アーティストや建築家によるリノベーションを行い、現在は設計事務所やデザインスタジオが入居している。住吉町新井ビルを所有する新井清太郎商店の宮崎康往さんは「屋上や壁の防水対策などまだ課題もあるが、使い続けることで新たな価値が生まれる」と話した。
ゲストとして、建物の再生などを行う箱バル不動産(北海道函館市)の蒲生寛之さん、創造系不動(東京都墨田区)の高橋寿太郎さんが登壇。蒲生さんは「建物が持つストーリーを伝えること、地域の人が立ち寄れる建物であることを大切にしている」。高橋さんは「リノベーション後の中の活動をどうするかが重要。建物の再生とともに、建物オーナーの収益事業再生でもある」などと講演した。