ドラッグストア大手、ココカラファインとマツモトキヨシが経営統合に向けた協議に乗り出した。なぜ、いま経営統合なのか。決断の背景に迫る。
「大変競争が激しくなっているドラッグストア業界で、勝ち残るための道を模索した」
8月下旬、ドラッグストア大手のココカラファイン(横浜市港北区)とマツモトキヨシホールディングス(千葉県松戸市)が開いた経営統合の協議に関する記者会見。ココカラの塚本厚志社長は、集まった報道陣を前にそう強調した。
続いてマイクを握ったマツキヨの松本清雄社長も、自らに言い聞かせるように言葉を継いだ。
「昔は『日本一のドラッグストア』と呼ばれたが、3番手、4番手、5番手とどんどん順位を下げていった。経営統合により、また日本一に返り咲ける」
ドラッグストア業界では、年間の連結売上高が4千億円以上の企業がひしめき、激しい競争を繰り広げている。業界7位のココカラと5位のマツキヨの統合が実現すれば、売上高は1兆円規模となり、2位を大きく引き離し、業界首位へと躍り出る。会見では、松本社長が「アジア1番のドラッグストアを目指す」と宣言するなど、強気な発言が続いた。
大手同士の経営統合は何を意味するのか。長年、業界を調査する流通経済研究所(東京都)の加藤弘之主任研究員は「そうでもしなければ生き残れない、との危機感があるのだろう」と指摘する。
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ドラッグストア業界が大きく成長した30年間は、再編の歴史とも言える。
ドラッグストアの前身は街の薬局や薬店だ。1970年代にドラッグストアが誕生すると、各企業は低価格、大量販売というスタイルで薬局、薬店の顧客を取り込み、競争が激化。90年代にテレビ広告などの効果もあり業態が社会に浸透すると、2000年代以降は各社ともに出店地域を拡大させていく。
風向きが変わったのは、2010年以降だ。「08年のリーマン・ショック後、景気が落ち込み、さらに09年の登録販売者制度導入に始まる医薬品販売の規制緩和により他業態との競争が激化したことを経て、チェーンの優勝劣敗が決まっていった」と加藤主任研究員。