2025年までの「原発ゼロ」を掲げる台湾の洋上風力発電市場に、日本企業が熱視線を注いでいる。市場もメーカーも欧州が先行するが、設置が想定される台湾海峡は、台風が多いという気象条件が特徴。日本企業は台風と向き合ってきた実績を生かし、国家プロジェクトでの商機を模索している。
台湾の蔡英文政権は「原発ゼロ」を公約に掲げ、16年に誕生した。公約は東日本大震災での東京電力福島第1原発事故が理由で、台湾で稼働中の3基の原発が40年の稼働期間満了となる25年を目標に定めた。
「日本は原発をしっかり管理していたが、それでも事故は起きた。だから台湾で事故が発生する可能性はある」と、台湾経済部(経済産業省)エネルギー局の李君礼副局長は説明する。
現在、電源構成の4・8%にとどまる再生可能エネルギーを20%まで引き上げることで、12%を占める原発の発電量を補う。国土が狭いため、その中核として洋上風力発電を見込んでいる。予定地は中国との間にある台湾海峡で、台湾電力によると、25年までに264基の風車を洋上に建設する計画だ。
ただ、台湾海峡は台風の多発地帯。「台湾企業には台風に耐えられるだけの風力発電設備の生産能力はない」(李副局長)ため、外資の参入に期待する。
先進地である欧州に比べ後発の日本企業は、台湾市場をどう見ているのか。
県内でも2工場を稼働させる造船大手ジャパンマリンユナイテッド(東京都)の担当者は、「国家プロジェクトとして強力に進めていることから実現性が高く有望だ」と前向きに捉える。現時点でも、着床式と呼ばれるタイプの発電施設の設置に必要とされる作業台船など、商機を探っている。
資源エネルギー庁が福島県沖で進める「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」では、同社が風車などの浮体を納入。16年に台風が相次いで直撃した後も安定稼働しており、耐久面での実績を強調する。
さらに、現地と近い“地の利”も魅力的に映る。担当者は「日本からのアクセスが欧米よりも容易で設備納入後もアフターサービス、保守できめ細かく対応できる」と力を込める。
別の大手メーカーも「現時点で具体的な計画はない」と前置きしつつ、「将来的に有望であることは間違いない」と語った。
日本財団は企業や大学、研究機関とコンソーシアムを設立し、海洋再生可能エネルギー分野の技術者育成を進めている。同財団海洋開発人材育成推進室の吉田正則室長は「アジア市場はこれから大きく成長する」とみる。「特に台湾の洋上風力発電開発は現地で盛り上がっており、日本企業も高い関心を示していると聞いている」と明かす。
その上で、「コンソーシアムとしては、国内外から寄せられる日本企業への期待に沿える若い技術者を育てたい」と意欲を見せる。