県内の不動産会社幹部はため息交じりにつぶやいた。
「雨が降ると、傘を奪い取るんですよ」
住宅開発に対する銀行からの融資が一気に絞られるようになったのは2018年に入ってからのことだった。それまでは小規模なアパートやマンション開発への融資はほぼ審査が通ったという。だが一転、シェアハウスローンへの巨額の不正融資が発覚した「スルガ銀行問題」をきっかけに金融機関の融資姿勢は一気に厳格化した。
「いまでは普通のアパートや建売住宅でも審査が厳しい…」
土地の価格も上昇基調が続いている。利便性の高い駅に近い好立地な土地は「手に入れることができても、販売価格が高額になりすぎて売れない水準になりつつある」(不動産会社幹部)。
腰折れの懸念
県内のある建設業者幹部は耳を疑った。
「マンション専業の不動産会社が、仕入れた土地を転売したという。資金繰りが追いつかなかったのだろうか。民間からの発注は企業の信用状況を精査しないと安心して受注できない」
経営が難しい局面に入ったと話す。「景気の肌感覚は、今年に入ってから確実に冷えてきた。結局、いまの景気は足腰の強いものではない。ちょっとしたことで落ち込んでいくのではないか」
物価が上昇し続け、だから働く人の実質賃金が上がらない。国内消費は回復の兆しが見えない。内需がおぼつかい状況にあって、世界的には景気後退局面に入りつつあるという見方は少なくない。
見通しは暗く
内需と外需の総崩れか-。
「景況感のピークアウトは鮮明化してきた」
浜銀総合研究所の城浩明上席主任研究員は断言する。同研究所が四半期ごとに実施している県内中小企業の景況感調査は2期連続でマイナスとなった。財務省横浜財務事務所による県内企業景気予測調査(景況判断BSI)でも、1-3月のマイナス7・8から、さらに悪化しマイナス12・4と大きく落ち込んだ。
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2013年当初から続くとされる「景気拡大」だが、景況感はピークを越え下降へと向かいつつある。景気の足元と、経済現象の今に迫る。