
「最初はドキドキしたけど、やってみたら簡単ね」
横浜橋通商店街(横浜市南区)に60年続く果物店で、若い買い物客が会計時に手にしたのは財布ではなくスマートフォン。69歳の女性店員は、QRコード決済の取り扱いを済ませると、ほっとした表情を見せた。
同商店街で3月末日から、スマートフォンアプリを使ったキャッシュレス化の実証実験が始まった。食料品店や喫茶店、洋品店など15店舗が参加する。
同商店街協同組合の高橋一成理事長によると、加盟約130店のうちクレジットカードを使えるのは20店ほど。電子マネーの中でも年代問わず身近な交通系ICカードを導入する店はほとんどなく、現金を使う客が圧倒的に多い。
しかし昨年12月、ソフトバンクヤフースマホ決済サービス事業者「ペイペイ」(東京)が実施した100億円を原資に決済額から20%を還元するキャンペーンが話題となり、「近隣に住む中国人からスマホ決済が使えるか質問されるようになった」(果物店主)という。
横浜で決勝戦が行われるラグビーワールドカップ(W杯)や来年の東京五輪・パラリンピックでは多くの訪日外国人客(インバウンド)が押し寄せ、ビジネスチャンスが生まれる。
実証実験を主催する横浜青年会議所は「店舗、消費者とも、まずはキャッシュレス決済の利便性を感じてもらうこと」が普及の第一歩と説明。高橋理事長は「これから商店街が生き残るにはこれしかない」とキャッシュレス化の進展に期待を寄せる。