
遠くに江の島(藤沢市)を望む南向きの高台に、その木造2階建ての一戸建て住宅はあった。
築22年。当時の市場価格からするとおよそ6千万円前後だったとみられる。建売業者が開発・販売し、後に別の業者が買い取ってリフォームし再販する段階で、不正は発覚した。
基礎がない-。
床下を確認した1級建築士の山本康彦さんは言葉を失った。
茅ケ崎市で設計事務所を営み、これまで数多くの施工不良を目にしてきた山本さんだが、ここまでの欠陥は初めてだった。
建物の耐震性は壁と柱で保つ。だがそれは頑丈な鉄筋コンクリートで作られた基礎に支えられて初めて機能する。
「いつ倒れてもおかしくない。2011年3月の東日本大震災では藤沢市内も震度4の揺れに見舞われた。倒壊しなかったのが不思議なくらいだ」