旧東海道川崎宿沿いで明治時代から続く老舗ガラス店の4代目が、事務所(川崎市川崎区本町)に隣接するガレージ倉庫を改装し、クラフトビールの醸造所を21日に開く。「この地域を盛り上げていきたい」。かつて川崎宿があった場所で、往時をほうふつとさせるにぎわいを生み出したいと意気込んでいる。
醸造所「東海道BEER川崎宿工場」を開いたのは、明治27年に輸入ガラス店として創業した「岩田屋」4代目の岩澤克政さん(50)。
3年ほど前、市のリノベーションスクールを通じて使っていなかったガレージ倉庫の使い道を考えた際、地ビール醸造所の開設を思い付いた。醸造の様子も見学でき、出来たてのビールを味わえる場所を造ることで、川崎宿という歴史的な遺産を持つこの地域の活性化を図ろうと決めた。
幸区内でクラフトビール造りと販売を手掛けていたが、交通事故によるけがで仕事を辞めてリハビリ中だった醸造技師の田上達史(さとし)さん(39)を口説き、同工場に招き入れた。
改装は1級建築士の岩澤さん自身が仲間と手掛けた。外観は、近くにある稲毛神社の神木で川崎区の木であるイチョウと、「勝ち虫」と呼ばれ縁起のいいトンボをあしらった透かし彫りの壁。中に入ると12席ほどのカウンター越しに、ガラス窓の中のステンレス製の発酵タンク3基、一晩寝かす貯蔵タンク1基が見える。
19日に開かれたオープニングセレモニーで岩澤さんは「日本家屋の中から庭園を眺めるように醸造タンクを配置した。ステンレス製のタンク群は、川崎の工場夜景のイメージにもつながります」と訪れた関係者に店内を紹介した。
江戸切子のランプシェードや、浮世絵の東海道五十三次「六郷の渡し」を近未来風に描いた絵を壁に描くなど凝った造りになっている。
ビールは4種類を用意。爽快な苦みが特徴的なIPAやポーターと呼ばれる黒いビール、大麦に小麦も加えたホワイトビール、イチゴを使ったフルーツビールを提供する。値段は1杯650円から。瓶入りも市内の酒店や飲食店で販売する予定だ。
営業は年中無休で平日は午後5時半~同11時。土、日、祝日は午前11時~午後11時。日曜日は田上さんが醸造を行う日で、ガラス窓越しに店内外から見学できる。