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県内企業連携、データセンターへ応用に期待
8K高速&省電力の伝送映像装置を開発

経済 | 神奈川新聞 | 2017年6月22日(木) 13:15

高速かつ省電力で8K映像データを伝送できる切り替え装置の開発に取り組んだOA研究所の矢田社長=鎌倉市
高速かつ省電力で8K映像データを伝送できる切り替え装置の開発に取り組んだOA研究所の矢田社長=鎌倉市

 情報通信機器のOA研究所(鎌倉市)と、光関連製品を手掛けるエピフォトニクス(大和市)は共同で、超高精細な8K映像データを高速かつ省電力で伝送できる切り替え装置を開発した。映像の切り替え時に乱れが生じない上、従来装置に比べ、放送局向けネットワークシステムの消費電力を7割以上低減できるという。飛躍的な通信データ量の増大に伴い、消費電力の増加が課題となっているデータセンターへの応用が期待され、県内企業が連携して編み出した技術力の進化が注目される。

 両社による装置開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、川崎市幸区)が2015年度に「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」に採択し、資金助成している。

 8K映像の画素数は、現行のハイビジョン放送(2K)の16倍に上る。国は20年の東京五輪に向け、8K放送の本格化を目指す。格段に鮮やかな映像を提供できる一方で、大容量のデータを円滑に、かつ省エネで長距離伝送するシステムが求められている。

 今回は超高速で映像を切り替えられる上、消費電力増大の要因となる光から電気への変換処理を原則、伴わないエピフォトニクスの「PLZT光スイッチ」と呼ばれる独自技術を採用。OA研究所がこの技術を搭載した全体の伝送切り替えシステムを手掛けた。従来の電気スイッチに比べ消費電力は4分の1程度で済み、既存の光スイッチとの比較でも100万倍以上の高速切り替え性能があるという。


装置に搭載されたエピフォトニクスの超高速PLZT光スイッチ
装置に搭載されたエピフォトニクスの超高速PLZT光スイッチ


 PLZTは鉛、ランタン、ジルコニウム、チタンの酸化化合物。エピフォトニクスが研究を重ね、半導体基板に単結晶上に薄膜成長させることで、光の損失が少なく、効率的に切り替えができる特性を引き出した。同社の梨本恵一社長は「ナノ(10億分の1)秒レベルの高速光スイッチをはじめ、広く応用できる基盤技術」と今後の可能性に期待を寄せる。

 8K映像向けの実用化とともに、両社とNEDOが到達目標に据えるのは、サーバーやネットワーク機器などの通信機能を集約したデータセンターの消費電力低減だ。スマートフォンやクラウドサービスの急速な普及で、データ通信量が加速度的に増大。OA研究所などによると、データ量の多くはデータセンター間やその内部でやり取りされており、20年には10年比で5倍の消費電力増が見込まれる。

 OA研究所の矢田善春社長は「8K映像での協業成果を踏まえ、20年の実用化を目指し、世界中に市場が広がるデータセンター向けにシフトして開発を進める。情報社会の進展による消費電力の増大に、確かなソリューションを提供したい」と話した。

 
 

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