
JVCケンウッド(横浜市神奈川区)が開発を進めていた車載用の「デジタルコックピットシステム」が、実用化にこぎ着けた。共同開発した英国自動車メーカー、マクラーレン・オートモーティブ社の高級スポーツカー「マクラーレン720S」に搭載され、国内では今夏以降、納車が始まる予定。JVCケンウッドは「実用化は重要なステップ。これを機にさらに先進技術に磨きを掛け、国内外の自動車メーカーに採用されるよう提案力を高めていく」と話す。
デジタルコックピットは、運転席の各種表示や操作を電子化し、安全性や操作性を高めるシステム。720Sは今年3月、スイス・ジュネーブで開催されたモーターショーでお披露目された。
今回、720Sに採用されたJVCケンウッドの技術は、スピードメーターなどの計器類をデジタル表示した高精細センターディスプレーと、指で画面に触れて操作するタッチスクリーン式のディスプレーユニット。
センターディスプレーは、フルサイズモード(10・25インチ)なら3つの運転シーンに合わせて、表示情報が切り替わる。画面サイズはボタン操作や自動スライドでスリムモード(6・35インチ)も選択できる。
ディスプレーユニットは空調など各種設定のほか、各国語対応のナビゲーションシステムに対応。全方位カメラの映像を合成して、車の状況を俯瞰(ふかん)できるようにし、駐車時などのドライバーの操作負担を軽減する。情報と娯楽を一体で提供することから「インフォテインメント」と呼ばれる機能だ。
同社は2013年からデジタルコックピットシステムの研究開発を本格化。背景には、08年に旧日本ビクターと旧ケンウッドの経営統合で船出した同社の合流効果を、最大限発揮できる成長分野との認識がある。「日本ビクターが得意とする映像・表示技術、ケンウッドが培った車載機器への知見を融合し、強みを出せる」と説明する。
同社は、人の視野に直接情報を映し出すヘッドアップディスプレーや、電子ミラーなどの先端技術も実用化に向け開発中で、15、16年の米国でのエレクトロニクスショーにも出展した。
音響やカメラ、無線、CD・DVDソフトなど多彩なラインアップで事業展開するが、17年3月期の売上高ベースでは車載関係のオートモーティブ分野が約5割を占める。競争激化の中、デジタルコックピットをはじめ次世代の車載分野の伸長は必須で「他社にはないとがった技術で勝負したい」と話す。
