
横浜市内の民間事業者らが、アジアからのインバウンド(訪日外国人旅行)獲得に向けて話し合う組織を立ち上げた。7月から中国人の個人ビザの発給が緩和されるなど市場拡大が見込まれる中、ホテルや旅行、運輸など業界の枠を超えて参加。情報交換や課題共有の場としている。アジア各国に横浜という“商品”をどう訴求していくか―。正解のない答えを求め、知恵を絞っている。
横浜観光コンベンション・ビューローの呼び掛けで本年度、始まった「アジアインバウンド部会」。各企業の営業担当者や県観光課職員など約50人が、メンバーに名を連ねる。
▼現実甘くない
6月28日。2回目となった部会は、10月に予定される「羽田空港国際化」がテーマだった。
市が調査委託した大和総研の試算では、羽田国際化による市内への経済波及効果は年間約191億円。市内を訪れる外国人は34万人増え、うち7割の約23万人が韓国・中国・台湾からとしている。
この数字をどう受け止めるべきか。部会では、幹事からの提案で、グループごとに意見をまとめる作業が行われた。しかし出席した事業者らは一様に懐疑的。行政との“温度差”をうかがわせた。
「そもそも(海外では)横浜自体があまり知られていない。だから現地旅行会社がツアーを組まず、人も来ない」「(羽田空港が国際化されても)移動のために利用するケースやビジネス路線も多いはず。現実的には甘くないのでは」
▼連携の重要性
中国人らの訪日ツアーの定番は、「ゴールデンルート」。大阪―東京間を結ぶもので途中、富士山を見学したり、都内の百貨店や家電量販店などで買い物したりするツアーが人気を集めている。
横浜への来街者を増やすためには、こうした旅行を既に経験している個人富裕層に焦点を定めPRする一方、インフラの整備が欠かせない。
ある参加者は羽田と市内を結ぶ無料送迎バスを走らせることを提案。こう力を込めた。「一民間事業者だけでなく、行政も含め費用を案分する形で、バスルートを作ってみては。本当に横浜へ来てほしいなら、“オール横浜”で立ち上がらなくてはならない」
部会幹事の一人、新横浜ラーメン博物館(横浜市港北区)ラー博事業部の一重(ひとえ)治さんは「正直、黙っていても客が来るとの土壌が横浜にはある。しかし、旅行者の生の声を共有しながら連携していくことが重要だ」と話す。
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