神奈川県内に本店を置く8信用金庫の2010年3月期決算が出そろった。取引先企業の業績悪化に一服感が出たことから、経営再建中の湘南信用金庫(横須賀市)を含めた全信金が黒字を確保した。11年3月期は伸び悩みの続く貸出金の底上げが課題で、信用供与の余地を広げる経営体力の強化を求められそうだ。
預金の期末残高は、再建策の一環で店舗の統廃合を進めた湘南を除き、ほぼ横ばい。貸出金は緊急保証制度の需要が一巡し、資金需要が冷え込んだことを反映して、5信金で減った。
一般企業の売上高に当たる経常収益は、低金利を反映して減収傾向。債務の返済猶予を金融機関に促す中小企業金融円滑化法への対応に注力した結果、貸出利回りも低迷した。一方で経費節減に努めた結果、本業のもうけを示す実質業務純益はおおむね底堅く推移した。
横浜信用金庫(横浜市中区)は有価証券の減損処理額が前期から大幅に減少、川崎信用金庫(川崎市川崎区)では前期に積んだ貸倒引当金の戻し入れが発生した。さがみ信用金庫(小田原市)では逆に、戻し入れの生じた前期からの反動で信用供与の費用が膨らみ、利幅が縮まった。
2期連続で赤字が続いて信金中央金庫からの資本支援も受けた湘南はコスト削減に取り組み、3期ぶりに最終黒字を保った。
経営の健全度を示す指標で、総資産に占める内部資金の割合を示す自己資本比率は、全信金が国内業務の基準とされる4%を上回った。17・97%の中栄信用金庫(秦野市)が最も高く、川崎と横浜、平塚信用金庫(平塚市)、中南信用金庫(大磯町)も10%を超える高水準だった。
ただ取引先企業の経営に疲労感が募った実情を反映し、不良債権は減らない。金融再生法に基づく開示債権の残高は5信金で増え、総額では12億円増えた。11年3月期も前期並みの与信費用を見込むなど慎重な予測を立てる傾向が強い。
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