膠着(こうちゃく)状態が続いていた相鉄いずみ野線(二俣川―湘南台)の湘南台以遠への延伸計画が前進することになりそうだ。路線延伸に必要となる膨大なインフラ投資を公的機関が引き受ける「上下分離方式」に、県や藤沢市が前向きな姿勢を示しているためだ。
「LRT(次世代型路面電車)や環境配慮型システムが可能かどうかの検討に、鉄道事業のノウハウを生かしたい」。沼野恵一・相模鉄道社長は22日の会見で述べた。
相鉄はいずみ野線を二俣川―いずみ野(1976年)、いずみ野―いずみ中央(90年)、いずみ中央―湘南台(99年)と、段階的に開業。いずれも自前の線路を敷いてきた。
湘南台以遠の事業免許も、平塚に至る区間で取得。運輸政策審議会の答申(2000年)でも、JR相模線方面への延伸が「整備について検討すべき路線」とされた。
ただ必要な投資費用は大きい。県が04~06年度に実施したいずみ野線延伸研究会でも、湘南台―ツインシティの建設費について「鉄道800億~1千億円、LRT300億~400億円」との試算が出ている。このため相鉄は、自治体や商工団体で構成する県鉄道輸送力増強促進会議で早期着工への要望を受け、逆に「公設民営型」を求めてきた経緯がある。
当面の延伸先となる慶応大湘南藤沢キャンパス(藤沢市)周辺では市が区画整理事業を実施。地元は路線延伸で「産業集積にも期待を寄せている」(海老根靖典市長)としている。
◆上下分離方式 鉄道や空港などの交通経営で、インフラ(下部)の管理と運行(上部)を担う組織が分離される形態。運行事業者の初期投資や固定資産の税負担が軽くなる。相鉄が2019年までに実施するJR東日本、東京急行電鉄との相互直通運転も、インフラの大半は鉄道・運輸機構が整備。小田急多摩線(新百合ケ丘~唐木田)の相模原市への延伸構想でも小田急電鉄が公設民営型を求めている。
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