石油元売り各社が県内の系列給油所を舞台に、電気自動車(EV)向けサービスの事業性を検証する作業に本腰を入れ始めた。急速充電にカーシェアリングや洗車、整備などを組み合わせたサービスの複合化が主流。エコカー普及に伴うガソリン需要の減退をにらみ、太陽光発電機能なども備えた「総合エネルギー拠点」への転換を探る。
「EV普及の一翼を担う拠点には、メンテナンスの機能を持ち、営業時間も長い給油所こそが適している」。新日本石油の西尾進路社長は23日、EV事業の一拠点となっている系列給油所「小杉店」(川崎市中原区)で力説した。
新日石は県内では年内に8カ所、来年1月以後も2カ所に急速充電器の設置を計画。三菱自動車の「アイ・ミーブ」を備え、近隣住民に貸し出して利用状況のモニター調査も実施する。小杉店ではカーシェアリングも始めており「予約は初日で定員を超えた」(西尾社長)という。
出光興産は11月、大和市内の給油所に太陽光発電とLED(発光ダイオード)照明、急速充電器を設置する方針。普通充電器も県内4カ所に展開する。充電サービスの決済にはETC(自動料金収受システム)を活用することで省人化を図る。コスモ石油は横浜市鶴見、金沢区内の2カ所に、昭和シェル石油も藤沢市内の給油所にそれぞれ急速充電器を設置した。
施設に太陽光発電パネルを設ける試みもあり、利用者に浸透している給油ネットワークを多様なエネルギーを供給できる地域拠点としたい考えだ。
充電する電気料金だけでは収益確保が見込めない点が課題とされる。ただ、「ガソリン車の滞留時間はセルフ式給油所で最長数分、フルサービス式でも7分程度」(昭和シェル)だったが、充電では10分を超えるため、待ち時間を利用した洗車や整備の利用増などに期待する声もある。走行中に周囲の充電施設の空き情報をカーナビで知らせるなど、情報関連産業からも対応の動きが出てきそうだ。