バイオベンチャーのリプロセル(横浜市港北区)は、臨床用のヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)の凍結保存に使える試薬を開発した。製品化は国内では例が少なく、細胞医薬品の製造などに使われる見込み。他人のiPS細胞から作った細胞を移植する「他家移植」と呼ばれる新たな治療法の実現にも寄与できるといい、再生医療の普及を下支えする。発売は、今年度の第1四半期中の計画だ。
試薬は「リプロクライオ アールエム」と呼ぶ新製品の凍結保存液で、ヒトの胚性幹細胞(ES細胞)でも使える。これまでも研究用としてのヒトのiPS、ES細胞を凍結保存する試薬は既に普及しているが、間接的に人の体内に入るため、より高い安全性が求められる臨床用の細胞の凍結保存で使えるようにしたのが今回のポイントという。
同製品は、同社が2015年8月から販売してきた研究用向けの凍結保存液を改良。医薬品などで順守すべき製造管理や品質管理の基準「GMP」への適合を図るなどし、臨床実験に用いられるグレードに仕上げた。
企業や大学が取り組むヒトiPS細胞を用いた再生医療の研究開発の推進に役立てられる見通しだが、さらに期待がかかるのが他家移植の実現への寄与だ。
iPS細胞を使う再生医療では現状、患者本人のiPS細胞から作成した細胞を移植する自家移植と呼ばれる治療法が主流だが、時間やコストがかかるなどの課題を抱える。今回の試薬は他家移植の前提となる他人のiPS細胞を備蓄する過程での貢献を見込む。
リプロセルは「iPS細胞を活用した再生医療の研究が、臨床実験段階へと局面が全体的に進んでいる」と現状を説明。積極的に拡販を進め、「グループの再生医療分野を支える製品の一つとして育成していきたい」と述べた。