
世界約20カ国から集まった従業員で、日本のデジタル化推進を目指すベンチャー企業がある。スマートフォンを使った自動接客システムを提供しているIT会社・エボラニ(横浜市港北区)。8月には、日本で暮らすウクライナ避難民向けに災害時の支援ツールを開発するなど、多様な視点を生かして社会課題の解決に挑んでいる。
創業者は、中国出身の宋瑜(そうゆ)社長(43)ら。2005年から日本の企業で働き続けてきたが、17年に中国を視察した際、各企業が接客やマーケティングにメッセージアプリを活用していることに驚き、日本でも同様のサービスを展開しようと、翌18年に起業した。
日本国内でユーザー数の多い無料通信アプリLINE(ライン)に着目して開発したのが、自動対話システム「チャットボット」を使った接客や販売促進の機能。ライン上で、飲食店の予約やメニューの注文、クリニックの事前問診、アパレルブランドの販売キャンペーン参加など、さまざまなサービスに対応できる仕組みだ。
人手不足対策や業務効率化を図りたい事業者のニーズとマッチし、当初数社程度だった利用者は徐々に増え、現在は3500事業者ほどに。教育、医療、小売り、自治体など業種も幅広く、売り上げは毎年2~3倍になっているという。

現在約70人の従業員はアジア圏のほか、ヨーロッパ、北米・南米、オーストラリア、アフリカと世界各国から集まる。多様な視点は、新たなサービスを生み出す力にもなっている。
今年8月には、日本で暮らすウクライナ避難民向けの災害時支援ツール「ベセルカ」を開発。ラインなどからQRコードを読み取るだけで地震、台風・大雨など状況に応じて身を守る行動がウクライナ語と英語で調べられるようにした。
アイデアは、宋社長をはじめ、海外出身の社員たちが日本で暮らす中で困った経験から生み出された。実際、7月に日本ウクライナ文化交流協会と合同で実施した避難民へのアンケートでは、73%が「救急車の呼び方」を知らず、77%が「豪雨や台風時の対応」は分からないと回答した。
支援ツールは無償で提供し、100人ほどの避難民や支援者が利用。宋社長は「今回は避難民に特化したが、在日外国人や観光客の悩みの解決にもつながる」と、サービスの発展に意欲を見せる。
今後力を入れる戦略は
多国籍視点でDX推進 ウクライナ避難民向け支援ツールも
宋社長(前列左から4人目)をはじめ、世界約20カ国から集まるエボラニの社員ら=横浜市港北区 [写真番号:1121160]
約20カ国から集まったメンバーが働く職場=横浜市港北区 [写真番号:1121161]
「いろいろな発想が生まれるのが多国籍メンバーの強み」と語る宋社長=横浜市港北区 [写真番号:1121159]