民意は「横浜IR」の実現を拒んだ。誘致に奔走してきた関係者の足跡をたどる。

敗れてもなお、その表情はすがすがしかった。
横浜市長選の大勢が決した8月22日夜。現職として4選に挑んだ林文子(75)は、同市中区の事務所で支援者約30人に語り掛けた。
「皆さまには感謝しかない」
その視線は、会場の一角にいた6人の自民党市議に向いた。「先生方には胸を打たれた」。言葉は次第に熱を帯びていく。「感銘を受け、全力で戦い抜けた」「結果的には負けたが、心が響き合った」「この経験は宝物」…。
次々とあふれ出す謝辞の根底にはしかし、自身の境遇に対する不満がにじみ出ていた。それは、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)が争点の一つとなった市長選で、旗印とした誘致推進という政策への「背信」に起因している。
「情緒的」
幻の「横浜IR」(1)あふれる謝辞に込められた不満と皮肉
現職として横浜市長選に挑んだ林文子氏(左から4人目)と、支援した自民党市議6人=8月22日午後8時半ごろ、横浜市中区の事務所 [写真番号:805472]