街中や施設を舞台にした「謎解きゲーム」の開発会社と、ワニのマークで知られる中堅出版社。およそ接点のない異業種の2社で、社長職を掛け持つ38歳の実業家がいる。小川真輔=横浜市旭区=。新型コロナウイルス禍と出版不況に挑む「二足のわらじ」の足跡をたどった。

「頭脳を駆使して新球団のトライアウトをクリアせよ」
2018年5月。熱気が冷めやらない試合直後の横浜スタジアム(同市中区)で、謎解きゲームが開催された。2日間で千人を超すファンが集結し、球場内に仕掛けられた暗号の解読を楽しんだ。
小川が12年に設立したDAS(ディーエーエス、同)は、「NAZOTOWN(ナゾタウン)」のブランドで謎解きゲームの制作を手掛ける。店舗を持たず、顧客の「ハコ」に合わせた独自の企画を提供。1件当たり400万~500万円を売り上げ、多額の開発費を捻出するビジネスモデルを確立した。
街や施設への集客を促進したい不動産デベロッパーや鉄道会社と取引を重ね、話題の映画やアニメとのコラボレーション作品も展開。5期目の決算で黒字化を達成すると、若年層を中心とした「謎解きブーム」に乗って年商1億円の大台に手を掛けた。
イベント中止、一転存続の危機に
だが、総勢9人のスタートアップ企業で開発を担う人材は限られ、案件の数をこなせない課題に直面。市場の盛り上がりで新規参入も相次ぎ、受注争いは激化していった。
そんなさなか、新型コロナの感染拡大でイベントが軒並み中止に。新規案件が消え、月間の売上高は急降下して10万円を割り込んだ。順風満帆だったDASは一転、存続の危機に立たされた。
「リアルだけの『一本足打法』では倒れてしまう。新しい武器が必要だ」
小川は頭をひねった。
異業種掛け持ち社長<上> コロナ禍…一本足打法からの脱却
法人向けのオンライン謎解きツール「アソビズ」の画面上でルールを説明する小川真輔(右下) [写真番号:510399]