県内に路線がある大手私鉄4社(東急、小田急電鉄、京浜急行電鉄、相鉄ホールディングス〈HD〉)の2020年9月中間連結決算は、新型コロナウイルスの影響で全社が最終赤字に沈んだ。鉄道やホテル事業はコストの削減余地に限りがあり、需要の急減がマイナスに直結。各社ともに21年3月期連結決算も最終赤字と見通す。安定的な収益力を誇ってきた私鉄各社が、コロナ禍であえいでいる。
「まさか赤字とは」
私鉄4社の鉄道輸送人員は、緊急事態宣言が発令された4、5月に前年比の5~6割程度まで減った。その後は回復傾向にあったが、足元でも7~8割と伸び悩み、運輸収入も落ち込んだ状態が続く。
「9割まで戻れば黒字化できる」
相鉄HDの平野雅之取締役経営戦略室長は10月末の決算会見でそう説明した。鉄道事業の損益分岐点が高い原因は、「硬直的」とも言える収益構造にある。
鉄道は営業費用の約8割を固定費が占め、柔軟性に乏しい。乗客の命を預かる性質上、車両などのメンテナンス費は削減が難しく、運行や駅での業務に携わる人件費、高額な設備の減価償却費ものしかかる。
各社は期末の来年3月にかけて、輸送人員が徐々に回復する展開を描く。しかし、コロナショックに端を発したテレワークの普及によって、通勤は日常の光景ではなくなりつつある。「今後も利用者は100%まで戻らない」との見方が定着してきた。
「まさか鉄道が赤字になるなんて」。ある私鉄関係者はそう漏らす。各社は安全性を担保しつつ設備投資を抑制し、デジタル化の加速などで経費の節減を急ぐが、黒字転換の時期を明確には見通せていない。