潮風が吹く会場は親子の歓声に包まれていた。
9月中旬、横浜・八景島シーパラダイス(横浜市金沢区)で開催された「海の動物たちのショー」。イルカたちが音楽に合わせてダイナミックなジャンプを繰り出すと、会場の熱気は最高潮に達した。車で来た市内の女性は「新型コロナウイルス感染拡大以降、初めて遊びに来た。自宅から30分以内で来られるという気軽さがいい」と笑顔を浮かべた。
緊急事態宣言解除後に営業を再開してから約3カ月。施設の運営会社「横浜八景島」(同)の広報・後藤直哉さんは「自家乗用車で来られるお客さまは増えている。特に県内のお客さまの割合は昨年より伸びている」と話す。
同社が8月のお盆期間に近隣駐車場の利用者を調べたところ、県内ナンバーの車は前年同期比2割増となった。遠方ではなく近場で観光や旅行を楽しもうとする傾向は強まっている。
〈横浜市の魅力再発見〉
新横浜プリンスホテル(横浜市港北区)は先月、そう銘打った宿泊プランを発売。同じ西武グループの横浜八景島と共に企画したプランは横浜・八景島シーパラダイスのチケット引換券が付き、同ホテルを拠点に横浜観光を楽しんでもらう狙いだ。
JR新横浜駅近くにある同ホテルはこれまで宿泊客の大半が仕事で利用していた。しかし、コロナ禍でビジネス需要は激減。さらに、近くの横浜アリーナで予定されていた数々のコンサートが中止となったことが追い打ちを掛けた。
西武ホールディングス(東京都)は2020年4~6月期連結決算で、ホテル・レジャー事業の営業損益として143億2400万円の赤字を計上した。
同ホテル事業戦略チーフマネジャーの森淳さんは「ビジネスからレジャー、団体から個人、遠方から近場とホテルのコンセプトや対象を見直さなければ生き残れない」と危機感を示す一方、期待も口にする。「神奈川県の人口は900万人超。この商圏は魅力的。地元再発見のコンセプトを打ち出す意味は大きい」
実際、人出の回復につながった観光地もある。
コロナ時代の旅(中) 魅力 「地元再発見」に活路
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横浜・八景島シーパラダイスのショーは地元住民からも人気を集めている=横浜市金沢区 [写真番号:350855]
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江の島土産の定番「女夫饅頭」で知られる紀の国屋本店。売り上げ回復に向けた模索が続く=藤沢 [写真番号:350856]