
本物のような金魚の造形で知られる美術家の深堀隆介さん(43)の作品展「キンギョ・イン・ザ・スカイ」が、横浜駅東口のスカイビルで開催中だ。6日には観衆の前で作品を描くライブペインティングが行われ、描き出された美しい金魚が集まった人々の目を引きつけた。深堀さんは「僕は養魚場の主人で金魚を作出している」と、新しい金魚を楽しみながら生み出している。
「スカイビルにかけて青空をイメージした」と青色の加工紙をびょうぶに仕立て、アクリル絵の具でまずは雲を、そして金魚の胴体のシルエットを描いた。
そのシルエットに「何を描きましょうか」と会場に問いながら、文字や富士山、ベイブリッジなどをカラフルに描き入れた。これが金魚に?と思っていたら、その上に白くうろこを重ねていくとあっという間に白い金魚に。最後に尾ひれを描き、約1時間で青空を泳ぐような金魚の姿が完成した。
◆他の魚は無意味
スランプでアーティストをやめようと思い詰めていた2000年のある日、ろくに世話もせずに飼っていた金魚に呼ばれた気がした。水槽のふたを開けて、金魚を上から見たとき「ぞわぞわした」という。
「金魚は人間がフナを品種改良して生み出したもので自然界には存在しない。人間の近くにいるけれど、どこから来たのか分からない感じ。こんな謎めいて美しいものになぜ気付かなかったのか。これを描こう」
この出来事を金魚に救ってもらったと感じ、深堀さんは「金魚救い」と呼ぶ。横浜にアトリエを構え、金魚だけを一心に描いてきた。
人間が生み出した金魚。養殖をやめてしまうと元のフナに戻ってしまうし、自然界では生きていけない。金魚の方が人間を使って、自分たちを進化させているのではないか、と思うことも。そんな金魚と人間の関係に興味がある。
「他の魚を描かないのかと言う人もいるが、僕にとって他では描く意味がない」
代表作は、器に流し入れた樹脂の表面に金魚を描き、それを重ねることで、金魚の肌の透明感を表現した一連の作品。容器に升や欠けた食器などを使い、生きているかのような存在感が魅力だ。
最近取り組もうとしているのが、金魚の形を超えた金魚の表現だ。28日まで平塚市美術館で展示している作品「澪台」では、レトロなタイル貼りの洗面台に金魚の姿はなく気配を感じさせるだけだ。
「僕の世界観に特化した作品を作りたいと思うようになった。ようやく余裕ができたのかもしれない」
これまでやってこられたのは、金魚のおかげだという。「なぜ金魚を描いているんだろうと思う時もある。金魚が僕を動かしているんです」
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「キンギョ・イン・ザ・スカイ」は28日まで。10階中央広場で、ライブペインティングで制作したびょうぶや立体作品など60点を展示。入場無料。28階の吹き抜けには作品イメージを利用した垂れ幕を展示。問い合わせは同ビル電話045(441)2424。
21日午後2~3時、客員教授となった横浜美大(青葉区)で特別講演会を行う。予約不要、入場無料。問い合わせは同大電話045(962)2221。


