
3人組ロックバンド「back number」が、1月末に開始した全国ツアーを、メンバーの地元・群馬県で7月24日に締めくくった。巡った39公演すべてのチケットは完売し、17万人を動員した。いま最も勢いがあるバンドの魅力はどこに-。
「自分でも気がつかなかった感情を歌詞の中に見つけた」。2月に県民ホール(横浜市中区)で行われたライブ会場で、拳を振り上げていた地元の男子大学生(22)は熱っぽく語る。
「気になる女の子を目で追いかけていた時、『クリスマスソング』の中にあった、『会いたいと思う回数が~君の事どう思うか教えようとしてる』という歌詞を耳にして、『あ、好きなんだ』と気がついた」。クリスマスを一緒に過ごしたいと、憧れの人にCDを贈り、告白した。
県民ホールで、バンドのTシャツを着て、ステージを見つめる男子大学生の傍らにいたのは、いとしい人。「大事な思い出がひとつ増えた」と、彼女の手をギュッと握った。
バンドの魅力は「歌詞」と来場した多くの人が口をそろえた。「励まされ、揺さぶられた」
ボーカル・ギターの清水依与吏(いより)(32)は、歌詞に込めた思いは、「自分が聴きたいと思うもの」と言う。「聴くことは自分と対話すること」。くじけそうなときに、「負けないで」と歌う自分の声に、背中を押されたこともあった。
歌詞に登場する主人公の多くは頼りない。好きな女の子に相手にされず、何で僕じゃダメなんだろうと背を丸くする。聴き手は、「~かな」と呼びかけてくる歌詞に、立ち止まり、自身に問う。夢を追いかけ、恋人や家族を思い、必死で生きる姿は、「自分のことのよう」と多くの共感につながった。
7月に東京・日本武道館で行われたコンサートでは、曲の合間に観客席と会話していた清水に、back numberのライブをきっかけにつきあい始めたというカップルから、「今度、結婚します!」と喜びの声が届けられた。
ともに生きることを決めた二人から、「『花束』を歌ってほしい」とリクエストされ、「サビ部分だけ」と予定外の演奏で場を盛り上げた。「結婚おめでとう!」。9千人が祝福した。
バンドは2004年に清水を中心に結成、ベースの小島和也(32)、ドラムの栗原寿(30)とともに、11年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビュー。13年に武道館でライブを行うなど人気を拡大した。
15年末に、月9ドラマ「5→9~私に恋したお坊さん~」の主題歌に採用された「クリスマスソング」で大ブレーク。楽曲は、歌詞検索サイト「歌ネット」で歌詞を公開後、2カ月で15年のトップ検索曲になる人気に。勢いは衰えず、これまでに560万回以上のアクセスを記録し、同サイトの16年上半期でも、1位に輝いた。
半年をかけて行った全国ツアーでは、3人が生み出した音楽を求めるファンの声に触れた。清水は「1曲で世界を救ってしまうような、半径がものすごくでかい曲は書けないかもしれない。でも自分の言葉で書いて、曲を作って、また会いたいと思ってもらえるように頑張りたい」と決意を新たにした。












