
東京湾、夏の人気釣り物の一つが、シーズンを迎えたマダコ。今年は10年ぶりに湾北部を中心に湧きがよく、大釣りが続いている。旬の味を求め、横浜・本牧漁港の長崎屋釣り船(長崎昭船長)で楽しんできた。
小突いて誘う
マダコは水深10~20メートルの浅い海底の岩場に潜み、カニやエビに抱きつき、食べている。船釣りの場合は、好物のカニ(冷凍したもの)をタコテンヤという専用の仕掛け=イラスト=に縛り付けて狙うのだ(タコツボは使いません。念のため)。

出船前、長崎船長から釣り方のレクチャーがあった。タコテンヤは自分の目の前に落とし、「コツン」と手応えがあったら、手首を軽く返して、重りが海底から離れる感覚をつかんでおく。小突いてカニを踊らせるのだが、注意するのは、「タコテンヤが海底から離れないようにします。大きい動作だと海底からテンヤが離れ、マダコがカニに抱きつけなくなります。細かく一生懸命小突いてください」だった。
モアッとか、ムニュという感覚が海底から仕掛けを通して伝わって来たら、マダコがカニに襲いかかった証拠。小突きを続けた手が止まったら、小突いていた手を船内側に横方向にビュッと強く引いて、針がかりさせる、とのことだ。
港前から攻める
午前8時、20人の釣り人を乗せ、出船。1分もしないうちに港前で釣り開始。左舷を中心に0.3キロ程度の小ぶりなマダコが複数釣れた。
その後、船は北に進路を取り、横浜港シンボルタワーが近くに見える釣り場に。船を岸壁にグンと近づけさせ、釣り人が小突き始めると、0.5キロのマダコが盛んに釣れだす。左船尾にいた石橋正勝さんは、身が柔らかい食べ頃のマダコを連発。帰港までに13杯を釣ってさお頭になった。

特大も姿見せ
大黒埠頭(ふとう)近くで釣っていると、右舷船首近くにいた初挑戦の神山克也さんの手が止まった。「船長根掛かり(海底の岩場などに仕掛けが引っ掛かること)」と言うと、中乗り(助手)さんが飛んできて、引っ掛かったテンヤを外しにかかる。「おっ。これはタコだ」と慎重に糸を手繰り、海底からテンヤを引きはがすと、1キロを超える良型が取り込まれた。
トホホ記者もこれ以降、釣りに参加。久しぶりにタコテンヤを海底で小突いていると、「モアーッ」とぬれタオルが引っ掛かったような感触。小突いていた手が止まり、「よっしゃ」と合わせを入れると、ズンという重み。「早く上がってこい」と糸を手繰ると、海面近くでボアーっと足を広げた赤茶色をしたマダコが上がってきた。逃がしかけたが、隣にいたベテラン釣り師の島田政彦さんが、たも取り。「よかったな。記者さん」と0.5キロのマダコを手渡してくれた。
さらに船は北上。川崎の浮島沖で釣っていると、右舷やや後ろに陣取っていた田中清春さんが「おっ。これは大きい」と真剣な表情。悪戦苦闘の末、仕留めたのが3.7キロの特大サイズ。「いやぁ。ズシッと重くて、締め込みが強かった」と満足げな表情。
取材日の釣果は、特大交じりで、0.3~3.7キロ。0.7キロクラスが主体で2~13杯。船中134杯と好調だった。トホホ記者4杯と、久しぶりにそこそこの収穫だった。長崎船長は「6キロオーバーの超特大も釣れました。マダコは最盛期を迎え、数・型とも望めます。小型もいるので年末までのロングランも期待十分です」。
長崎昭船長直伝のマダコの処理の仕方。まず、釣ったマダコは冷凍し、食べるときは、ボウルの水で自然解凍。解凍できたら、頭をひっくり返して内臓を取り、2回ほど塩もみしてぬめりを取る。
きれいに水洗いしたら、沸騰した鍋の湯に茶殻を入れ、足から漬けていく。足先がクルクルと丸まってきたら、徐々にマダコを湯に入れていき、最後に頭を入れて1~2分。色鮮やかなゆでダコの出来上がり。その身はぷりぷりで、半生の状態。かめば、じわーっと甘みが広がり、旬の味を堪能した。

【メモ】
船宿に午前7時半までに集合。出船は午前8時
▽料金 9千円(カッタクリ道具、タコテンヤ、冷凍ガニ付き)
▽タコテンヤ 1本500円
問い合わせは長崎屋釣り船
電話045(622)8168。


