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しなやかに時代を生きぬき 横浜でメアリー・カサット展

カルチャー | 神奈川新聞 | 2016年7月23日(土) 02:00

「母親とふたりの子ども」(左)のようなさまざまな母子像を紹介している=横浜美術館
「母親とふたりの子ども」(左)のようなさまざまな母子像を紹介している=横浜美術館

 印象派を代表する女性画家として活躍した米国人メアリー・カサット(1844~1926年)の生涯と作品を紹介する「メアリー・カサット展」が、横浜美術館(横浜市西区)で開催中だ。明るい色彩と軽やかな筆遣いで描かれた油彩画には、困難を乗り越えて画家として突き進んだ強さが込められている。

 女性の日常を穏やかなまなざしで捉えた油彩画や版画、同時代の女性画家の作品など約110点を展示。子どもと向き合う母親の姿を愛情あふれる筆致で描き「母子像の画家」と呼ばれる。会場にもさまざまな母子像が並んでいるが、カサットの本当の魅力は、画面の奥からにじみ出てくるといえるかもしれない。

 女性の職業画家がなかなか認められない時代にプロの道を模索し、家族の反対を押し切って米国からフランスへ渡ったほどのバイタリティーの持ち主。パリでエドガー・ドガに出会い、彼の勧めで印象派展に参加し、革新的な表現を追求するようになる。ドガとのロマンスが伝えられるが独身を通し、画家として自立する人生を選んだ。

 こうした困難や覚悟は、幸福感あふれる画面からはうかがえないが、作品そのものが強い意志と熱心な研究の成果を示している。

 「果実をとろうとする子ども」は、母親に抱かれ、リンゴに手を伸ばす赤ん坊を描いた。知恵の実を自らもぎ取ろうとする子とそれを助ける母の姿であり、新しい時代を切り開いていく女性の姿を思わせる。

 浮世絵に影響を受けて取り組んだ多色刷り銅版画のシリーズ物では、さまざまな技法的実験を繰り返し、試行錯誤した。子どもを湯あみさせたり、鏡の前で身繕いしたり、といった女性の日常を繊細な線と鮮やかな色彩で表現。複雑な刷りを実現するために刷り師を雇い、20近く版を重ねたものもある。10点一組をそろえて展示しており、まれな機会だという。

 「近代以前の女性アーティストの研究や評価は十分に進んでいない。近代的女性画家のパイオニアとして取り上げることに意義がある」と同館の沼田英子主席学芸員。しなやかに時代を生きぬいた強さは、現代にも通じる女性の一つの生き方を示している。

 9月11日まで。祝日を除く木曜休館。一般1600円、高校・大学生1100円、中学生600円。問い合わせはハローダイヤル03(5777)8600。

                ◇
    
 同展を小さな子どもがいる母親にもゆっくり見てもらおうと、8月19~21日午後1時半~同4時、託児サービスを行う。対象は1歳~未就学児で、定員10人。料金は千円。(1)保護者の氏名、住所、電話番号(2)子どもの人数、性別、生年月日(3)希望日を明記し、メール(yma-oubo@yaf.or.jp)で申し込む。先着順で8月9日締め切り。問い合わせは同館電話045(221)0300。

 
 

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