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絵画から読み取る 19世紀夏のファッション

カルチャー | 神奈川新聞 | 2016年7月11日(月) 11:45

モネの絵と並ぶオーガンディ生地でできた夏用のアフタヌーン・ドレス=ポーラ美術館
モネの絵と並ぶオーガンディ生地でできた夏用のアフタヌーン・ドレス=ポーラ美術館

 印象派の画家たちが活躍していた19世紀の欧州では、女性たちの間でどんなファッションが流行していたのか。箱根町のポーラ美術館で開催中の「Modern Beauty」展に並ぶモネやルノワールの作品から、当時の夏のファッションの特徴をひもといてみよう。 

流行のスタイル
 妻のカミーユが息子のジャンや乳母と一緒に、明るい野原を散歩する姿を描いたモネの「散歩」。カミーユは白いドレスを着て帽子をかぶり、パラソルを差している。展覧会場では、文化学園服飾博物館が所蔵するよく似たドレスを並べて展示している。

 作品が描かれた1875年と同時期のドレスは、薄いオーガンディの生地に黒いストライプと紫の小花がプリントされている夏用のアフタヌーン・ドレス。当時流行したお尻を盛り上げて見せるバッスル・スタイルで、腰を細く見せる狙いがあった。

 これより前の50年代後半から60年代にかけては、クリノリン・スタイルのドレスが流行した。クリノリンはクジラのひげや針金を輪にし、ヒモなどでつなげて重ねた枠状の下着でドレスの下に着た。

 ドーム形のシルエットを容易に実現できて大人気になったが、大きすぎて周囲に当たったり、暖炉の火が燃え移り危険だったりと問題になることも。会場に展示している19世紀の画集「モードの拷問」では、こうしたいきすぎたファッションを風刺している。


パラソルと帽子
 パラソルは小さく、日よけとしての機能よりもアクセサリーとしての装飾性を重視。持ち手は彫刻のある象牙製で傘の生地にはレースや刺しゅうが施された。ただし、モネの作品に描かれるパラソルには大きめのものが多いという。

 帽子は頭の上に載せ、あごの下でリボンを結ぶタイプ。こちらも日よけというより、おしゃれの一部として身につけていた。だが肌の美白は今と変わらず最大の美容関心事。

 同美術館の岩崎余帆子学芸課長は「口紅や頬紅などの濃い化粧は女優や娼婦がするものとされており、一般女性は薄くおしろいをはたく程度。化粧水などを使ったスキンケアに専ら努めていたようです」と話す。

女性の社会進出
 モネやルノワールが描く人物画は、いずれもその時その時ではやっていた洋服を身にまとっている。ルノワールはモデルのために自ら帽子を作っていたという。ファッションは画面に望ましい装飾性をもたらす重要な要素だった。

 20世紀には、ギャルソンヌ・スタイルと呼ばれた断髪に男装の女性をモディリアニが描いている。コルセットやクリノリンから解放され、ハイウエストのすとんとしたドレスが流行したり、洋服に合わせてアイシャドーを使ったり、とファッションの世界はどんどん自由度を増していく。

 女性の活動範囲の広がりや社会進出と深く結びついているファッションの変化を、絵画から読み取る面白さが堪能できる。
 
◇◇◇

 「Modern Beauty」展は9月4日まで。問い合わせは同美術館電話0460(84)2111。

 
 

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