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映画「不思議なクニの憲法」 横浜で上映
日本国憲法、主役は庶民 記録映画、70歳メガホン

カルチャー | 神奈川新聞 | 2016年6月12日(日) 02:00

「この映画は、例えるなら幕の内弁当。憲法を知らない人でも楽しめるはず」と語る松井さん
「この映画は、例えるなら幕の内弁当。憲法を知らない人でも楽しめるはず」と語る松井さん

 古希を迎えた女性が一本の映画を撮った。その名は「不思議なクニの憲法」。日本国憲法をテーマに主婦や学生ら27人のインタビューを集めたドキュメンタリーで、11日から横浜シネマリン(横浜市中区)で上映が始まった。憲法改正が争点となる参院選を前に、監督の松井久子さん(70)は「改憲議論が政治によって進められるのではなく、主権者である私たちが語りたい」と語る。

 会場を埋め尽くす3万人が一色に見えた。

 2015年5月3日。改憲に反対する市民らが横浜・みなとみらい21(MM21)地区の臨港パークに集っていた。太陽が照り付けるステージで、主催者が声を張り上げる。会場の隅にいた松井さんは「言葉の強さやシュプレヒコールになじめなかった。彼らの結束力が強くなればなるほど、一般市民は引いてしまう気がした」。

 その足で向かった東京・渋谷駅。家族連れやカップルに声を掛けた。「今日が何の日か知っていますか」。憲法記念日と答えることができた人は1割にも満たなかった。「国民の意識に相当の差がある。この差を埋めたいな、と」。その日を境に本格的にカメラを回し始めた。

 日本国憲法が公布された1946年に生まれた。とはいえ、憲法に強い関心があったわけではない。テレビ番組やドラマの制作に携わり、初めて映画を撮ったのは50歳の時。テーマは老いや介護だった。

 初監督から20年。「私たちがいま向き合わなければいけない問題を撮りたい」という動機に変わりはない。憲法をテーマにしたのは、安倍政権の誕生がきっかけだ。改憲を訴える声が政府の側から上がることに危機感を抱いた。


インタビューを受ける瀬戸内寂聴さん
インタビューを受ける瀬戸内寂聴さん

 ただ「意見を押し付ける映画にはしたくなかった」。立憲主義や基本的人権の尊重、男女平等などについて幅広い人選でインタビュー。自民党の憲法改正推進本部長を務めた船田元衆院議員、紛争地の武装解除に携わった伊勢崎賢治さん、元外務官僚の孫崎享さんら論客の一方、自衛隊員の家族や主婦、高校生ら市民も登場する。


伊勢崎賢治さん
伊勢崎賢治さん

 こだわったのは「庶民感覚」だ。映画にこんなシーンがある。

 ある夫婦の会話。「ねぇパパ、何で憲法や政治のことを語ってこなかったと思う?」。主婦である妻の問い掛けにサラリーマンの夫は答える。「何でかねぇ。とりあえず、いま困ってないからかなぁ」

 松井さんは言う。「日常に根差した人々の声に耳を傾けたかった」。なぜか。「私自身が庶民だから。これは、庶民による庶民のための映画です」。製作費は全額、寄付で賄った。自主上映会は全国約200カ所。多くの市民が支える。

 パンフレットには出演者全員の名前と写真が載る。「憲法には私たちが個として大切にされる、と書いてある。憲法を考えることは一人一人が『どう生きるか』を選択することにつながっている」


孫崎享さん
孫崎享さん


  ◆
 120分。12日午後3時50分から横浜シネマリンで松井さんが舞台あいさつする。問い合わせは、同所電話045(341)3180。

 
 

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