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ガラス工芸の華麗な美 平塚市美術館で120点の名品紹介

カルチャー | 神奈川新聞 | 2016年5月30日(月) 16:39

 17世紀にベネチアで制作された作品から、現代のガラス作家による作品まで約120点の名品を紹介する「華麗なるガラス工芸の世界-ヴェネツィアから現代まで」展が、平塚市美術館(同市西八幡)で行われている。ガラス工芸の多様な表現が堪能できる。

 15世紀、ベネチアの職人たちが生み出した透明度の高いガラス製造技術は、革新的なものだった。当時の政府は職人たちをムラーノ島に囲い込み、技術の流出を防いだ。会場に並ぶ17世紀のシャンパングラスはエナメルや金で華やかに彩られ、グラスの足には繊細な細工が施されている。


日本人工芸家の作品が並ぶ一角=いずれも平塚市美術館
日本人工芸家の作品が並ぶ一角=いずれも平塚市美術館


 19世紀後半には、フランスのエミール・ガレがガラス造形に新風を吹き込んだ。新しい芸術表現アールヌーボーを代表する芸術家として、自然をモチーフにした曲線的なデザインを作り上げた。ガレの影響を受けたドーム兄弟も、次の流行であるアールデコの時代まで長く活躍した。

 機能性や直線的な美を重視したアールデコを代表する作家はルネ・ラリックだ。自動車のラジエーターキャップといった工業的なものや、光によって色を変える半透明で乳白色のオパルセント・ガラスで人体などの古典美を追求した作品に取り組んだ。

 日本でも岩田藤七と各務(かがみ)鑛三(こうぞう)が草分けとして活躍。ガラスが日用品として定着した戦前期に、花器や水指などの茶器を積極的に手掛け、「用の美」を追求した。

 20世紀には器とオブジェの間に位置する作品も生まれた。それは、デザインを行う絵描きと実際に作業する職人が共に作り上げた工房制作から、小さな窯が開発され作家自身がガラスを吹くといった個人での作業を可能にした環境の変化が大きい。

 ジェイ・マスラーの「街景」はボウルの縁部分で都会の街並みを黒く表現。縁から下の部分はつや消しで赤く着色し、夕焼けに街並みがシルエットで浮かび上がるような印象を与える。


多様な表現が見られる20世紀のガラス工芸。手前はジェイ・マスラーの「街景」
多様な表現が見られる20世紀のガラス工芸。手前はジェイ・マスラーの「街景」


 塩谷直美の「月の空」はうねるような月と小さなドアをモチーフに、詩的な世界を表している。

 同館の江口恒明学芸員は「お茶道具のようになじみのあるものも多いので、楽しんで見ていただけるのでは」と話した。

 6月19日まで。月曜休館。一般800円、高校・大学生500円。12日まで開催中の「萬鉄五郎×岸田劉生 その仲間たち」展も観覧できる。問い合わせは同館電話0463(35)2111。

 
 

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